ジェトロ対日投資報告2017(要約)4. 外資系企業による日本のビジネス環境の見方

外資系企業のビジネスは概ね好調、先行きへの見方も前向き

  • 日本進出に際してジェトロが支援した外資系企業を中心とした約1,600社を対象にアンケート調査を実施。260社から有効回答を得た。

日本での業況の先行き(今後1~2年)に対する見通し

日本での業況の先行きに対する見通しについて、「良い(上向く)」、「横ばい」、「悪い(悪化する)」と回答した外資系企業の割合を示したグラフ。回答企業数は256。「良い(上向く)」との回答が56.6%、「横ばい」との回答が33.2%、「悪い(悪化する)」との回答が10.2%であった。

日本のビジネス環境は改善の方向

  • 外資系企業は日本のビジネス環境が全体として改善の方向に変化しているとの見方。

日本のビジネス環境~過去1~2年と比較した変化

過去1~2年と比較した日本のビジネス環境の変化について、「外国人にとっての生活のしやすさ」、「外資に対する日本企業・社会の閉鎖性」、「外国語でのコミュニケーションのしやすさ」、「日本のビジネスの特殊性」、「ビジネスパートナー発掘のしやすさ」、「人材確保のしやすさ」、「ビジネスコスト」の7項目を対象に、「改善した」、「やや改善した」、「やや悪化した」、「悪化した」と回答した外資系企業の割合を示したグラフ。概ね、「改善した」、「やや改善した」の割合が多いものの、「人材確保のしやすさ」と「ビジネスコスト」については、「悪化した」、「やや悪化した」も比較的多い。

〔注〕「改善した」、「やや改善した」と回答した企業の比率をプラスに、「やや悪化した」、「悪化した」と回答した企業の比率はマイナスで示している。「変わらない」と回答した比率は図表からは省略。

7割の外資系企業が事業・雇用拡大を計画

  • 7割の外資系企業が今後5年以内の投資拡大に意欲(事業拡大・雇用拡大)
  • 投資拡大の具体的立地先は、東京、大阪、神奈川、愛知など大きな商圏を持つ大都市圏が上位に。
  • 投資拡大の機能としては、神奈川と兵庫で「研究開発」、愛知で「生産・製造」、福岡で「物流」など、地域ごとの特色が見られた。

今後5年以内の投資計画

「拡大する」、「現状を維持する」、「縮小する」、「移転する」、「撤退する」と回答した外資系企業の割合を示したグラフ。回答企業数は258。「拡大する」との回答が72.1%、「現状を維持する」との回答が23.6%、「縮小する」との回答が3.5%、「移転する」との回答が0%、「撤退する」の回答が0.8%であった。

今後5年以内の日本拠点での雇用見込み

「増員する」、「現状維持する」、「減員する」と回答した外資系企業の割合を示したグラフ。回答企業数は256。「増員する」との回答が69.5%、「現状維持する」との回答が27.0%、「減員する」との回答が3.5%であった。

投資拡大する際の立地(上位2つまで選択)

投資拡大の際の立地(上位2つまで選択)についての回答をまとめた円グラフ。回答数は270。東京都が34%、大阪府が16%、神奈川県が14%、愛知県が9%、福岡県が5%、兵庫県が3%、北海道が3%、栃木県が1%、沖縄県が1%、その他が13%であった。

投資拡大する際の立地および機能(上位2つまで選択)(―はデータなし)

投資拡大する際の立地および機能(上位2つまで選択)
順位 都道府県 件数 機能1位 機能2位 機能3位
1 東京都 93 営業・販売 顧客サービス 生産・製造、研究開発
2 大阪府 43 営業・販売 顧客サービス 生産・製造、研究開発
3 神奈川県 37 営業・販売 顧客サービス 研究開発
4 愛知県 25 営業・販売 顧客サービス 生産・製造
5 福岡県 14 営業・販売 顧客サービス 物流
6 兵庫県 8 営業・販売 研究開発 生産・製造
7 北海道 7 営業・販売 顧客サービス その他
8 栃木県 4 生産・製造、研究開発
8 沖縄県 4 生産・製造 営業・販売、顧客サービス
なし その他 35

外資系企業の生産性向上への取り組み

  • 4割超の外資系企業が過去1~2年で自社の生産性が向上していると回答。
  • いわゆる「働き方改革」に関係する取り組みを通じて生産性を向上させている外資系企業が一定数にのぼる結果に。

過去1~2年と比較した自社の生産性

「向上している」、「変わらない」、「下がっている」と回答した外資系企業の割合を示したグラフ。回答企業数は255。「向上している」との回答は43.5%、「変わらない」との回答が51.4%、「下がっている」との回答が5.1%であった。

生産性向上のために実施している具体的な取り組み(複数回答)

過去1~2年と比較した自社の生産性について「向上している」と回答した企業が、生産性向上のために実施している具体的な取り組みについて、項目毎に割合を示したグラフ。回答企業数は109で複数回答可。「人材育成・スキルアップ」との回答が50.5%、「適材適所の人事配置」との回答が37.6%%、「仕事の進め方の見直し(業務プロセス改善、会議時間短縮など)」との回答が34.9%、「多様な働き方の導入(在宅勤務、テレワーク、フレックス、短時間制など)」との回答が29.4%、「新販路の開拓」との回答が26.6%、「既存製品・サービスの営業強化」との回答が25.7%、「ダイバーシティ・女性活躍推進(多様な採用、女性管理職登用など)」との回答が22.9%、「間接部門のスリム化」との回答が18.3%、「新分野・新規事業への進出」との回答が14.7%、「ICTの活用(IoT、ビッグデータ、人工知能等を含む)」との回答が13.8%、「労働時間の短縮(ノー残業デー、朝方勤務、深夜残業禁止など)」との回答が12.8%、「仕入れ等の効率化」との回答が11.0%、「物流の効率化」との回答が8.3%、「その他」の回答が5.5%であった。

魅力の1位は「日本市場」、2位は「国家・社会の安定性」

  • 日本でビジネスを展開する上での魅力は、「日本市場」と「国家・社会の安定性」。

日本でビジネス展開する上での魅力(上位3つまで選択)

日本でビジネス展開する上での魅力(上位3つまで選択)についての回答をまとめたグラフ。回答企業数は258。「日本市場」との回答が65.9%、「国家・社会の安定性」との回答が40.3%、「優れた日本企業やパートナーの存在」との回答が28.7%、「世界を代表するグローバル企業の集積」との回答が28.3%、「インフラの充実(交通、物流、情報通信、エネルギー等)」との回答が24.4%、「研究開発の質の高さ」との回答が22.5%、「2020年東京オリンピック・パラリンピックに向け需要増・販売増が見込める」との回答が12.4%、「アジアへのゲートウェイ、地域統括拠点として最適」との回答が11.6%、「有能な人材の確保が可能」との回答が11.2%、「知的財産法整備の充実」との回答が6.2%、「外国人にとっての生活環境」との回答が5.4%、「行政支援の充実(ビジネス支援機関、優遇制度、インセンティブ等)」との回答が4.3%、「資金調達のしやすさ」との回答が1.9%、「規制緩和」との回答が1.2%、「その他」が4.7%であった。

日本政府および産業界に対する改善要望

  • 日本政府や産業界への改善要望のトップは、「グローバル人材の育成」。

    日本政府や産業界に緩和や改善を望む規制・要望(複数回答)

    回答企業数は255。「グローバル人材(日本人)の育成」との回答が35.7%、「外国語によるコミュニケーションの円滑化」との回答が32.2%、「行政手続きの簡素化(手続き数の削減、ワンストップ化)」との回答が32.2%、「規制・許認可制度の国際的不調和の解消」との回答が31.4%、「行政手続きの多言語化」との回答が23.5%、「規制緩和(規制の数の削減・撤廃、許認可基準の引き下げ」との回答が23.1%、「税制」との回答が22.0%、「高度外国人材の海外からの呼び込み(ビザ取得要件の緩和)」との回答が20.0%、「行政手続きのオンライン化」との回答が19.2%、「輸出入手続きの簡素化」との回答が18.4%、「外国人留学生の採用促進」との回答が9.4%、「外国人にとっての生活環境」との回答が7.1%、「その他」の回答が2.7%であった。
  • 外資系企業の人材確保にあたり、「外国語でコミュニケーションが取れる人材の不足」、「専門人材の不足」などが課題。
  • 職種別では、「技術者」の確保が特に困難。

    人材確保に関して、特に困難と感じているもの(上位2つまで選択)

    回答企業数は255。「外国語でコミュニケーションがとれる人材の不足」との回答が66.7%、「専門人材の不足」との回答が35.7%、「人材の募集・採用に係るコストの高さ」との回答が25.5%、「雇用流動性の不足」との回答が25.1%、「労働者の意識(強すぎる大企業志向、外資で働くことへの消極的姿勢など)」の回答が24.7%、「従業員の定着率の低さ」との回答が5.5%、「その他」の回答が6.7%であった。

    人材確保に関して、特に確保が困難な職種(複数回答)

    回答企業数は253。「技術者(スタッフ)」との回答が49.4%、「技術者(管理職)」との回答が33.2%、「営業・販売(管理職)」との回答が27.7%、「営業・販売(スタッフ)」との回答が27.7%、「経営・企画(管理職)」の回答が21.7%、「経営・企画(スタッフ)」との回答が13.0%、「顧客サービス(スタッフ)」との回答が8.3%、「顧客・サービス(管理職)」との回答が7.1%、「総務・管理(管理職)」との回答が5.1%、「総務・管理(スタッフ)」との回答が3.2%、「その他」の回答が9.1%であった。
  • 行政手続に関して、「税務」、「労務」、「在留資格」の手続改善が必要と回答した企業が多数。
  • 具体的に改善が必要な内容は、「行政手続きの複雑さ(手続きや窓口が多い、分かりにくい)」、「規制・許認可制度の国際的不調和」など。

    人材確保に関して、特に確保が困難な職種(複数回答)

    回答企業数は240。「税務」との回答が37.5%、「労務」との回答が25.4%、「在留資格(ビザ)」との回答が22.9%、「製品の安全基準」との回答が22.9%、「社会保険」の回答が19.6%、「会社登記」との回答が10.4%、「貿易」との回答が6.7%、「建設許可等の手続き」との回答が6.3%、「知的財産」との回答が5.0%、「環境規制(環境アセスメント)」との回答が4.2%、「その他」の回答が10.4%であった。

    行政手続き・許認可制度に関して、具体的に改善が必要なこと(上位2つまで選択)

    回答企業数は240。「行政手続きの複雑さ(手続や窓口が多い、分かりにくい)」との回答が36.3%、「規制・許認可制度の国際的不調和」との回答が32.9%、「規制の多さ・許認可し度の厳しさ」との回答が27.9%、「提出書類の多さ」との回答が20.4%、「手続きのオンライン化の遅れ」の回答が15.4%、「提出書類の翻訳」との回答が12.1%、「手続き・許認可に時間がかかる」との回答が11.7%、「優遇制度情報・支援サービスの不足」との回答が10.0%、「申請窓口における対応の不明瞭さ」との回答が8.8%、「申請や手続にかかる費用の高さ」との回答が4.2%、「その他」の回答が3.8%であった。

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