ジェトロ対日投資報告2017(要約) 3. 対日投資の新たな動向 -第4次産業革命時代 日本の課題解決や日本企業の海外販路開拓に貢献

第4次産業革命時代 -IoTやAI技術の導入により日本の課題解決に貢献

  • 高度な技術を持つ日本企業・研究機関の存在や、研究開発に適したインフラの充実などを背景に、外資による研究開発拠点の設置の動きは最近の対日投資のトレンドの一つ。
  • 足元では第4次産業革命の急速な進展を背景に、IoTやAIの分野で自社の技術と日本企業の技術を融合させ、日本でイノベーションの促進を図る外国企業の動きが活発化。
  • 「課題先進国」ともいわれる日本に商機を見出し、さまざまな課題解決に貢献する外国企業が出現。

第4次産業革命の技術により外資系企業が課題解決に取り組む事例

第4次産業革命の技術により外資系企業が課題解決に取り組む事例
分野 企業 概要
専門医不足対策、労働生産性向上、地域連携促進、医療の質向上 フィリップス・ジャパン(オランダ) 2017年2月、昭和大学病院内に研究開発拠点を設置して、複数の病院の集中治療室(ICU)をネットワークで接続する「遠隔集中治療患者管理プログラム」の研究を開始。遠隔からネットワークを通じて複数のICU患者の状態や生体情報、投薬履歴などをモニタリングすることが可能に。
GEヘルスケア・ジャパン(米国) 病院内のヒト・モノ・情報をインターネットでつなぎ、収集したデータを分析して、業務課代の抽出や経営効率の向上を図るプロジェクトを実施。医療機器の効率的利用や資産最適化、医療従事者の作業効率の改善を通じた生産性向上、医療の質の向上などが求められている医療現場での解決策となることを目指す。
ファイザー(米国) 同社が蓄積してきた臨床試験結果と解析ノウハウをもとに診断補助等を行うデジタルヘルスの新規事業開拓に取り組む。医療機器から収集した生成データを同社独自のアルゴリズムによって解析し、病気の予防や医師の診断補助に活用することを目指す。
農家における農作業の効率化とノウハウの継承 アナログ・デバイセズ(米国) 農作業のスマート化に取り組む実証研究を日本企業や茨城のイチゴ農園と共同で実施。温度、湿度、照度、二酸化炭素濃度等の環境データを自動的に計測するセンサーを設置し、取得したデータを遠隔モニターし、分析して生産予測への活用や、最適な生産プロセスを可視化することで効率的な収穫量の増加や高品質化を目指す。
ボッシュ(ドイツ) AIを利用したハウス栽培トマト向け災害予防システムの販売を開始。農作物の病害予測への貢献を目指す。
製造現場の生産性向上、工数削減 GEヘルスケア・ジャパン(米国) 製造現場における生産最適化を図るプロジェクトを実施。作業者、機材、設備等に取り付けたビーコンなどから取得したデータを解析し、ディスプレイに動線や作業工程を表示させ改善機会を発見する仕組みを作り、工数削減につなげる。
ハイシンク創研(中国) 親会社はソフトウェア開発の大連華信計算機技術股份有限公司。2017年2月、京都に研究開発拠点を設置。AIによる機械学習とIoT技術を活用し、機械設備の故障等の不具合を事前に察知する製造現場向けソリューションの研究開発を実施。
セニット・ジャパン(ドイツ) 広島の自動車部品メーカーと共同で、車体溶接ラインを対象にしたデジタルファクトリー(バーチャル工場)の実証研究に取り組んだ。ロボットや冶具等からデータを収集し、一括で3Dシミュレーション化することで、トラブル発生時の対処検討や故障予知などを行う試み。
その他分野(金融、観光、通信インフラ)における課代解決の取り組み スカイマインド(米国) 海外でクレジットカードやモバイルネットワークの不正利用・不正アクセス検知に用いられているAI技術を活用し、日本の金融機関やアプリ開発企業と不正送金の検知の共同研究を実施。
LOOP Japan(カナダ) ダッシュボードを搭載した電動スクーター・電動自転車の外国人観光客向けバイクシェアサービスの実証実験を沖縄県や鎌倉市で実施。取得した利用者の情報や走行データをビッグデータ化し、自治体の観光戦略への活用を目指す。
エリクソン・ジャパン(スウェーデン) 日本のIoT化を支えるネットワークインフラとして活用が期待される次世代の超高速通信網である第5世代(5G)を見据え、無線機とアンテナを内蔵する街路灯の実証実験を広島で開始。

越境EC(電子商取引)-日本企業の海外販路開拓に貢献

  • 日本の「洗練された巨大な市場」やアジアの「トレンド発信地」としての位置づけは、対日投資を誘引する有力な魅力の一つ。
  • 高い品質を求める日本の顧客に対応することで付加価値とブランド力を高めた日本の製品に対し、旺盛な購買力を持つ海外消費者の信頼は厚く、需要が拡大。
  • 越境ECを利用した日本ブランド製品の購入が急伸。越境EC分野での外資の日本進出が相次ぐ。
  • 2016年の中国による日本からの越境EC購入額は、中国人訪日観光客による買い物総額を初めて上回り、1兆円を超える規模に。

中国からの訪日観光客による買い物総額と中国による日本からの越境EC購入額比較

「中国から日本へのインバウンド消費」と「中国による日本からの越境EC購入額」について、2015年と2016年の数値を示したグラフ。インバウンド消費は2015年の8,088億円から2016年の7,832億円に減少した一方、日本からの越境EC購入額については、2015年の7,956億円から2016年の1兆366億円に増加している。

〔出所〕「訪日外国人消費動向調査」(観光庁)、「我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」(経済産業省)より作成

外資系EC企業の最近の日本での動き

外資系EC企業の最近の日本での動き
企業 本社所在国 概要
唯品会有限公司(vip.com) 中国 直接仕入れにより日本企業のバリューチェーンの一部に
  • 2016年1月、東京に日本法人を設立。
  • メーカーや総代理店から直接仕入れを行い、調達から販売、物流まで一括で行うことで、日本ブランド製品を安定的に中国の消費者へ供給する体制を構築。
京東集団 (JD.com) 中国 日本企業と提携し、生鮮食品の海外販路開拓も目指す
  • 日本製品の調達と日本企業との直接取引強化のため、2017年7月、東京に日本法人を設立。
  • 日本企業との提携による業務の幅を拡大させている点が特徴。日本企業がECサイト内に出店、出品する際のサポート、注文から配達までの時間を短縮したスピード輸送サービスにも注力。

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