高度外国人材活躍推進ポータル

アフリカ市場開拓に向けた外国人材活用事例

54か国からなり、12億人の人口を抱えるアフリカは市場開拓先としての可能性を秘めている一方、物理的な距離や情報不足により日本企業のビジネス拡大が途上にある地域です。本ページでは、アフリカ出身の外国人材を活用しながら新規市場への展開を積極的に行う企業をご紹介します。

音羽電機工業株式会社

兵庫県尼崎市

事業内容:各種避雷器等、雷害対策関連製品の開発・製造・販売、雷害対策コンサルティング等

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音羽電機工業株式会社外観

アフリカからのインターン生を受け入れ

日本での研修の様子

日本での研修の様子

兵庫県尼崎市に本社を置く⾳⽻電機⼯業は、創業から70年以上を数え、全国でも数少ない、雷害対策を専⾨とした企業です。雷の対策というと避雷針を想起しがちですが、同社の主⼒製品は避雷器。落雷があった際、電線等を伝った雷が電話機やPC等の電気製品にダメージを与えることを防ぐため、電信柱や分電盤などに設置されており、同社の配電⽤避 雷器は国内シェアの6割以上を占めています。

同社は、2015年に地元の神⼾情報⼤学院⼤学からの紹介で、初めてアフリカからのインターンシップ⽣を受け⼊れたことを⽪切りに、アフリカ市場開拓に関⼼を持ちました。この時のインターン⽣の⼀⼈が、ルワンダから来⽇し、現在も交流が続くアミリ・ムガウラ⽒です。

アミリ氏は、インターン中、同社のエンジニアチームに配属され、センサーのネットワーキング開発等の業務に携わりました。同僚の日本人社員とは、英語でコミュニケーションをとっていましたが、エンジニア特有の専門用語などはお互いが理解できたため、言語はさほど問題にならなかったといいます。

アフリカ人材を通じた現地ネットワークを活用

アミリ氏を受け入れたことで、同社は彼の出身国であるルワンダが、世界でも有数の雷被害の多発地域であることを知りました。ルワンダでは落雷による事故やインフラへの被害が頻発しており、同社は現地への雷害対策技術の導入を検討し始めました。

同社が現地調査に赴いたところ、第三国製の避雷器が導⼊されているものの、正常に機能していない現状を知ることとなりました。この状況を⾒た同社は、ルワンダに戻ったアミリ⽒をアフリカ側の窓⼝として、避雷器の現地への導⼊による雷対策の促進や、設備に応じた雷害関連機器の設置のための現地技術者の育成、またルワンダから近隣諸国への展開に取り組んでいます。

避雷器は非常にニッチな製品であり、取り扱う顧客との関係が重要であるため、アミリ氏が有する現地の広いネットワークの活用が、音羽電機工業のアフリカにおける製品展開に大きく寄与しています。

ルワンダにおける現地エンジニアとの打ち合わせ

ルワンダにおける現地エンジニアとの打ち合わせ

アフリカ人材の視点

アミリ・ムガルラ氏
アミリ・ムガルラ氏
アミリ氏は、ルワンダ大学でコンピュータエンジニアリング等を学んだあと来日。日本を訪問する前から、日本車やアニメなどで日本のことはよく知っていたとのこと。「音羽電機工業では、当時新製品であったセンサー開発を任され、外部の人材であっても重要な仕事を任せてくれる同社の文化に感銘を受けた」と言います。現在は、自身がルワンダで立ち上げた企業に在籍しながら、音羽電機工業の現地代表として活動しており、製品のテクニカルサポートを担いながら同社のアフリカ向けビジネスを支援しています。

日之出産業株式会社

神奈川県横浜市

事業内容:排水処理薬品製造販売、排水処理設備計画・設計・製作・施工、排水処理設備メンテナンス、水質分析、微生物分析等

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日之出産業株式会社外観

日本の水処理技術をアフリカへ

オフィスでの業務の様子

オフィスでの業務の様子

1976年に設⽴された神奈川県横浜市の⽇之出産業は、排⽔処理施設向け薬剤の専門企業です。⽔処理⽤薬剤の開発、販売以外にも排⽔処理施設の設計や施⼯など、同分野で⾼い専⾨性を有しています。同社は新規市場開拓のためにアフリカ⼈材を活⽤しながら海外展開を⽬指しています。

近年同社が新規に開発した微細気泡と微⽣物製剤により⽔処理能⼒を強化する分散菌処理システムは、メンテナンスが容易であることが特徴です。そのため、今まで⽔処理がビジネスとして成⽴していなかったような新興国への展開が可能と考えた同社は、2013年の第5回アフリカ開発会議(TICAD V)等を契機に、アフリカへの展開に関⼼を持ち始めました。なかなか進出の⽷⼝が⾒つからなかった中、地元横浜市からABEイニシアティブプログラムを紹介され、アフリカから9名のインターン⽣を受け⼊れることになりました。

本当のアフリカを知るために

海外ビジネスの計画を具体化する中で、「本当のアフリカのことはアフリカ⼈しかわからない」と考えた同社はその後、毎年アフリカからのインターン⽣を受け⼊れ、現在も、⺟国に戻りスタートアップや現地政府等で活躍する40名を超えるインターンOBOGと交流を続けています。2019年からは、アフリカ⼈材の社内登⽤も始めており、過去にインターン⽣として受け⼊れた2名をそれぞれエンジニアと営業として採⽤しています。 従業員14名の規模でありながら、積極的にアフリカ⼈材採⽤を進める同社は、現在南アフリカで、現地企業と⽔処理薬剤の販売代理について交渉するなど、複数の国への展開を進めています。製品を⽇本からアフリカに向けて輸出することは種々のコストがかさむため、将来的には現地に⽀社を⽴ち上げて⽣産を⾏うことを検討している他、現地の⼤学と薬剤の共同研究も進めています。アフリカ⼈材の活⽤を通じて⽇之出産業によるアフリカ市場の攻略が続きます。

同社技術導入先の処理施設を訪問

同社技術導入先の処理施設を訪問

アフリカ人材の視点

トゥーレ・マハマドゥ氏
トゥーレ・マハマドゥ氏
母国セネガルの⼤学の⼟⽊⼯学部等を経て、修⼠学位を取得後、⽇本政府の留学⽣プログラムで北海道を訪れ、⼤学院でインフラや交通デザインを学びました。2019年から⽇之出産業で働きはじめ、エンジニアとして⽔処理施設の設計等を担当しながら、海外展開事業の⼀部も担っています。⽇本には新たなマーケットが必要だと考えており、そのために、同社の技術や製品をセネガルをはじめとしたアフリカの国々へ広めるために邁進しています。
ムリベト・シャイマ氏
ムリベト・シャイマ氏
モロッコ出⾝のシャイマ⽒は2015年に地元の⼤学の⽔⼒⼯学部を卒業しましたが、学部の勉強だけでは不⼗分だと感じ、翌年、留学⽣として来⽇しました。留学先として⽇本を選んだ理由は、同分野において⽇本が⾮常に先進的だと感じていたからだと話します。東北地⽅の⼤学で環境学を専攻し、⽇之出産業でインターンを経験した後、2020年1月から社員として働いています。現在、国内営業の傍ら、海外市場の新規開拓も担当しており、モロッコの他にもケニア、南アフリカ、シンガポール等の顧客と⽇々コンタクトをとるなど、同社の海外展開の要を担っています。

株式会社STANDAGE

東京都港区

事業内容:ブロックチェーン技術を使った貿易決済プラットフォームサービス、アフリカ向け輸出事業

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株式会社STANDAGE外観

デジタルで日本とアフリカを繋げる

ルワンダの現地顧客への訪問

ルワンダの現地顧客への訪問

STANDAGEは、ブロックチェーンや暗号化通貨の技術を⽤いた貿易の総合プラットフォームシステム「DiGiTRAD」を開発し、⽇本の製品を世界中に展開するために、⽇本企業と現地企業間の貿易のサポートを⾏っている企業です。「DiGiTRAD」は、⽇本の売り⼿と海外の買い⼿が価格や個数などについてインターネット上で協議を⾏い、ブロックチェーン技術を⽤いた特殊な決済システムなど安全な貿易取引を⾏うための機能を備えています。また、「アフリカの現地企業と直接やり取りするのはハードルが⾼い」と感じている⽇本企業が多いため、「コンシェルジュ」というサービスも提供しています。これは現地の⽇系企業を通じて、商品をテストマーケティングし、消費者の反応を⾒ることが出来る新たなサービスです。

転機をもたらしたアフリカ人材

元々、⼤⼿商社出⾝の社⻑と副代表が、⼤⼿が切り込めない新たな市場を開拓するため に、アフリカに注⽬したことが進出への第⼀歩でしたが、2017年に国内で開催されたアフリカ関連のイベントで登壇者だったナイジェリア出⾝のデイブ・ガブリエル⽒との出会いがきっかけとなり、現在はナイジェリアにオフィスを構えるまでに⾄っています。デイブ⽒の雇⽤を契機に、現在は中国やインドネシアの出⾝者等、多国籍の外国⼈材を雇⽤しています。今後もガーナやエチオピアなどアフリカにおける更なるビジネス展開のため、積極的に外国⼈材の採⽤と活躍を進めていく⽅針とのこと。商⽂化の全く違うアフリカでビジネスの展開が可能なのは、現地でリーダーシップを発揮しているデイブ⽒の存在があるからこそ、と⾔えます。

ナイジェリアオフィスの様子

ナイジェリアオフィスの様子

アフリカ人材の視点

ムリベト・シャイマ氏
デイブ・ガブリエル氏
デイブ⽒と日本の関係は⾃⾝の家族がナイジェリアで貿易業を営んでいて、取引国の⼀つが⽇本だったことが始まりです。何度も来⽇する中、⽇本に魅せられたデイブ⽒はその後、⽇本の物流会社で働き始め、既に20年以上在住しています。「⽇本の⼯場で「5S」を学びました。⾯倒だなと思うこともありましたが、実際にやってみると効率が良く、とても良い取り組みだということに気づきました」とのこと。「⽇本の⽂化をアフリカに輸出したい」―そんな想いから、ナイジェリア⽀店でも実際に5Sを導⼊し、効果をあげているようです。将来的には、アフリカにおける⽇本企業進出数が更に増えるよう、⽇本企業のアフリカ進出の促進や、現地企業とのマッチングなどに貢献していきたいと語ります。