丸山繊維産業株式会社
国内外の展示会をフル活用し、奈良から世界へ広げる蚊帳製品
丸山繊維産業株式会社は100年前から奈良で「蚊帳」を製造してきた。
時代とともに「蚊帳」の技術を、農業用の寒冷紗やギフト用のラッピング資材に応用。
そして蚊帳織物を現代の生活に合わせて、タオルやふきん、ストールなどを製造している。
時代に合わせて成長してきた「蚊帳」は、全世界で人気の商品となっている。
奈良県天理市 ウェブサイト
- 展開国・地域:
- 北米、欧州、オセアニア、韓国、東南アジア他世界各国
- 取扱製品:
- 蚊帳織物(ふきん、タオル、ファッション小物等)

(中央)丸山欽也代表取締役、 (右)丸山勝弘専務取締役、 (左)営業部丸山八大氏
伝統を受け継ぎ、高機能な「蚊帳」と「備長炭」の組み合わせが人気の秘密
蚊帳織りが奈良に伝わったのは古墳時代のことだったそうです。平安時代に貴族の間で人気となった「蚊帳」は、江戸時代に庶民の間にも広まりました。蚊帳織りは、1mmという向こう側が透けて見えるような薄く荒い縫い目の生地を、何枚も重ねて縫い合わせることが特徴です。そのため吸水性が高く、空気をよく通すため速乾性があり、丈夫でやわらかい、といった特徴を持っています。
弊社では、これらの蚊帳織りの特徴に、備長炭を染めこんだ糸を使用するという工夫を加えることで、更に消臭機能を加えた高機能な製品として海外からも人気を博しています。「備長炭」は海外のバイヤーにも伝わるほど、認知が広まっている大人気商品となっています。
原料となる糸は、アメリカの綿花を使用したオーガニックコットンです。品質が高いのはもちろんのこと、オーガニック製品に強いこだわりのある欧米のバイヤーや消費者からも高い評価を得ています。 蚊帳織りの場合、糸がとてもやわらかいのでそのままでは織れず、糊付けをして織っているという特性上、販売時にはぱりっと固い生地で売っていました。また日本国内では様々な可愛い柄のプリントされたふきんがとても人気があります。ですが海外のお客様の反応は「かたい」ということで、最初にお湯で糊を取れば柔らかくなると説明しても信じてもらえなかったため、タオル、寝具類は糊をおとし柔らかい状態で販売しています。また可愛い柄はあまり反応が良くなく、シンプルでナチュラルな風合いのものや備長炭色のグレーのものが人気だという事も分かりました。


機能性の高さが人気の秘訣 「蚊帳織物」のふきんやタオル
国内外の展示会を活用して切り拓いた輸出への道
海外展示会に初めてチャレンジしたのは2012年のこと。蚊帳織りのふきんなどの「Nawrap(ならっぷ)」が日本で人気が出てきたため、海外も視野に入れるようになりました。国内のギフトショーなどには何度も出展していたため、輸出先を探す場合も同じように海外の展示会に出るのが良いだろうと考えていた時に、折よく奈良県庁からNY Gift Show(現NY NOW)に県としてブースを出すという話があり、その5社に選定されました。翌2013年にNy Gift Showに出展したのが初めての海外への挑戦でした。国内の展示会には何度も出ていたので、海外の展示会でも同じ要領だと思いました。しっかり準備をして、興味を持ってくれた相手のことをよく聞き、コミュニケーションをしっかりとって信頼関係を作っていきます。相手は小さなセレクトショップの場合もありますし、大手の場合もありますが、規模や販売実績よりも、ハートの部分で判断しているように思います。だからこそ実際に展示会で会ったり、出会いがオンラインだったとしてもその後奈良の工場にも来てもらうなど、しっかりと信頼関係を築くことが重要だと考えています。
2013年にNY Gift Showの奈良県ブースに出た後は、自社単独でもブースを出してみました。その時にジェトロのブースも知り、その後は主にジェトロの展示会事業を活用し、北米のIHHS, Ny Now, Shoppe Objectそしてヨーロッパのアンビエンテやメゾンエオブジェなどにも出展しました。自社単独での出展に比べ費用面での負担も少なく済むのが有難いです。


海外の展示会への出展の様子
海外との直接取引にこだわる理由
弊社の商品は、セレクトショップなどからの少量の注文もあれば、大手量販店からのOEM生産の依頼もあります。自社工場で一貫して生産しているため、OEM生産も小ロットから対応できるような小回りの利くところが評価されていると思っています。お客様の要望にしっかりと応えていくためにも、自社で海外のディストリビューターと直接取引することにこだわっています。
英語でのコミュニケーションはDeepLを活用しており、少額決済はほとんどがPayPalです。ディストリビューターとは明示的な契約は結んでいませんが、決済をPayPalにすることで短期間且つ安全に取引することができます。契約書が無くてもお互いにコミュニケーションをしっかりと取り、信頼を損ねないようにすること。例えば他にディストリビューターになりたいというお話をいただいてもお断りするなど、その辺りは日本国内と同様に真摯に仕事をすることが大事だと考えています。
ディストリビューターとしっかりコミュニケーションを取り、信頼関係を築くことで、思わぬ出会いがあることもあります。NY Gift Showで知り合い、北米のディストリビューターになってもらっている人は、出会った当時はお店も無く実績もありませんでしたが、とてもまじめで熱意があり、また日本人のインターン生を3人ほど受け入れていたのでコミュニケーション面での安心があり任せてみたのですが、今でも一番のパートナーになってくれています。その彼を通じて米国の大手スーパーからコンテナ4本ほどのOEMの依頼を受けたこともありました。また韓国のディストリビューターは、知り合いのインフルエンサーを活用したマーケティングを行ってくれたところ、あっという間に全世界で一番の売り上げとなり、今度テレビショッピングでの販売機会ももらえることになりました。Japan Streetのようなオンライン事業も積極的に活用しつつ、海外展示会と両輪で活用していきたいです。
今後の展望
蚊帳織物の良さを今後も広めていくためにも、引き続き海外への販売は注力していきたいです。まだお取引できていないターゲット国も残っているので、そこも狙っていきたいです。またインバウンドのお客様にも気に入ってもらえるように商品開発にも取り組んでいきます。
丸山繊維産業株式会社
奈良県天理市
https://www.maruyama-seni.co.jp/
代表取締役社長:丸山 欽也
設立年:1930年
従業員:27名(2024年12月現在)
事業内容:農業用寒冷紗、包装用資材、生活雑貨等製造販売
2024年12月