有限会社ツルヤ商店

当社が手作業で編んでいる籐製品は山形市の伝統的工芸品であり、平安時代末期に日本に伝来してからかつては各地で盛んな産業でした。高温多湿に強いという素材特性があるため、ご家庭の脱衣所などで馴染みのある製品だと思います。しかし、時代の変化とともに安価な輸入製品が流入し、廃業した同業者も多数見てきました。同じ製品の場合に品質の違いというのを理解されにくいと感じ、デザイン性の高さを追求することにしました。自分たちでデザインしようとすると、作りやすくコストのかからないものしかできないと思い、約20年前に初めてデザイナーとのコラボに挑戦しました。当時はどこまで作り手としてデザインに踏み込んでいいかわからず、売上はそこまで上がりませんでしたが、ものづくりの力を活かしてモダンなスタイルの製品をつくったことで他の商品にも目を向けてもらうことができました。2006年にジェトロによる全国の工芸品紹介ブースに出展したことをきっかけに、もっと売れるものを目指し、デザイナーとコラボして制作した商品がhairuです。

hairuは日本での反応が想像以上によかったため、海外での反応を見てみたいと思い、ジェトロ山形の案内からTAKUMI NEXTに応募しました。わずかながら商談の機会を得られたことで、海外展開は容易ではないものの、可能性としては十分にあることを実感できたのは大きな励みになりました。1年目にどのような商品群があるかを知ってもらい、2年目に改めて検討していただいた結果、成約に結び付いたので、継続的な参加は重要だと感じました。また、当社は外材を使用しており完全にメイド・イン・ジャパンとはいえないものの、米国メンタリングを経て日本の職人によってつくられていることに価値がある、という気づきを得られました。それからは同じ素材でも、日本では機械ではなく手で原木の表面を削っているため均一な厚みにできること、衣類を入れたときの引っかかりが少ない点などを商談の中でもアピールするようにしています。洋にフィットする製品が注目されると思いきや、昔ながらの日本らしいデザインのものが逆に反応が良いなど、商談を経て得られる気づきも多いです。今後はより海外で受け入れられやすい商品は何か掘り下げて考え、早速5月から新商品の開発に取り組む予定です。

海外に商品を売ってみたいと考えたら、行動を起こすための最初のステップとしてTAKUMI NEXTに取り組むといいと思います。一度やってみれば、地道に目標を持って取り組むことで結果が出てくることを実感とともに認識できるようになるはずです。今はネットを通じて販路を開拓しやすいですし、色々な働き方がある時代なので、若い世代の関心も高まってきていると思います。必ずしも昔のように自分の子供に技術を継承する必要はなく、意欲のある人につないでいくことが若い頃からの私の理想でもありました。TAKUMI NEXTに参加すると、同じ想いを持って海外展開に力を入れようとしている地方のメーカーと出会うことができ、輸出に前向きに取り組めるようになります。日本における伝産品の需要が下がってきている中、仕事の魅力を高めて次の世代につなぐという意味合いでも、参加する意義があると思います。今後は海外の展示会への出展に挑戦し、継続的に売れるものを出せるようにしたいと考えています。