フジデノロソリューションズ株式会社

販売に必要な薬事認証を取得するには、いくつかのハードルがありました。事業に最も影響すると考えたのは、空白の期間が生まれることです。薬事関連の業態許可取得までに3年、さらに認証を得るのに1年かかるのです。 事業存続のために目を向けたのは海外での販売でした。ただ、各国に赴いて交渉するにはコストがかかりすぎるし、何より英語が堪能な社員がいません。どうしたら現地に行かず、英語を話さずにシステムを販売することができるのか。考え抜いた末、利用者それぞれがWeb上からシステムをダウンロードし、クリックするだけでセットアップできるプログラムに変更しました。また、問い合わせ手段をメールに限定し、製品提供とサポートの両方をオンラインで行いました。できないことは諦め、できることをする。この大胆な決断が功を奏し、海外向け『SonicDICOM® PACS』は世界中で約200もの国と地域でダウンロードされ、60万人を超えるユーザーを獲得するに至りました。

海外からスタートしたシステム『SonicDICOM® PACS』は、2018年にようやく国内での医療機器ソフトウェア認証を取得し、2019年にはクラウド版を全世界同時にリリースしました。クラウド版の特徴は、世界中どこからでもインターネット経由で医療画像にアクセスできることです。
この特徴を活かし、アフリカで撮影された画像を欧州の経験豊富な医師が読影診断する、東南アジアや中南米などの離島地域で遠隔診断を行うといった使われ方がされています。
海外への挑戦の過程で、JETROからの助言は大きな力だったと感じています。海外の情報収集や提供、市場展開へのアドバイスはとても参考になりました。さらに、海外進出企業をまとめたWebサイトで紹介してもらい、それを見た世界中の方から連絡があったのです。特にメキシコと香港の方については、その後、わざわざ来日してくれて直接商談することができました。このような縁が生まれたのもJETROのおかげです。JETROの支援を受けながら最初は小さな一歩だった海外事業が、グローバルなメディカルネットワークを形成し、医療格差の是正に貢献するという大きな目標を掲げるまでに成長しました。
今後は、地元の九州大学との提携をはじめ、さまざまな企業と連携することにより、AIを活用するシステムの開発を進めていきます。AIにより開発途上国での医師不足の課題解決にも貢献し、世界中の医療データを一元管理できる製品で医療格差がなくなる。そんな未来が近づいていると考えています。