株式会社櫻製作所

6年前、父から社長業を譲られた当初は、弊社の主要な海外ビジネスは間接輸出でしたが、商社出身の私はどうにか直接輸出ができないものかと模索していました。弊社が製造するオンレーター（熱交換器）の強みは、高粘度流体の攪拌・反応・熱交換を同時にできる点にあります。国内の食品メーカーや化学・化粧品メーカーにて使われており、弊社の装置を利用して作られた商品は、タイをはじめとするアジア諸国からの訪日観光客に大量に購入されています。ここに、アジア市場でのニーズを強く確信しました。弊社は経営も落ち着いてきた3年ほど前から本格的に直接輸出へのアプローチを始めました。しかしながら、まず何から始めればよいのかが分かりません。海外ビジネスの経験がある人材もいません。そのようなときに、ジェトロ主催の海外バイヤーとの商談会に参加してジェトロ大阪本部の職員から力強く励まされ、また、「新輸出大国コンソーシアム」の専門家と知り合ったことで道が拓けることになりました。

当初は、取引先候補の発掘に難しさを感じていましたが、東南アジアへの知見が深く、現地での幅広い人脈を持つジェトロの専門家のおかげで乗り越えることができました。専門家に支援いただく中で、市場性を見極めるアプローチ、顧客の抱える課題を引き出す製品訴求、現地顧客との商談における交渉術など、実践的な海外マーケティングの手法を学ぶことができました。また、弊社としても海外展示会への共同出展や、幅広い製品の提案を目的とした連携など、同業他社とのネットワーク構築に努めました。弊社では、競合となるドイツ製品と差別化すべく、自社開発製造ならではの独自性をしっかりとPRしながらマーケティングを行っています。必要に応じて、国内メーカーのみならず海外メーカーとも積極的なアライアンスを組むことで、毎年、輸出先を拡大しています。ASEAN諸国に続き、今後はインドへの参入も進めていきたいと考えています。

3年前に海外展開を決断したときは、社内にグローバル人材はおらず、私も外国語の学習に莫大な投資をしましたが全く習得できずに諦めていました。その代わりとして、若手のグローバル人材の採用に全力を尽くしました。採用面談では私自ら海外展開への思いを語り、東南アジア・中国・インドなどを目指すに適した人材を得ることができました。2017年度から毎年1名ずつ採用しており、現在では30代の語学堪能な3名の社員が各々自信を持って主体的に海外ビジネスに取り組んでいます。さらに2020年4月には海外事業部を立ち上げ、1年後、3年後、5年度の販売計画も明確にしました。やはり海外展開には優秀なグローバル人材が必須だと実感しています。

余談となりますが、経営の見える化にも注力しており、会議室の壁全面をスクリーンに替えて技術者が自由に図面を書き込めるようにしたり、毎月の朝会で包み隠さず全社員にP/Lの状況を共有したりと様々なことに挑戦しています。そのおかげで社風も随分と変わりました。