小川工業株式会社
キラリと輝く中小企業にしかできないことを。海外でさらに価値を高めたい
固有のプレス技術「ファインプレス工法」による自動車・建築向け高精度金属部品の製造・販売を行う。2012年に中国広東省に進出。2018年にはメキシコ・グアナファト州で工場稼働開始
和歌山県橋本市 ウェブサイト
- 展開国・地域:
- 2018年 メキシコ
- 事業内容:
- 建築、自動車向け高精度金属部品の製造・販売
自動車メーカーの動向を見極め、メキシコへ進出
2012年から進出した中国工場が軌道に乗り始めた2015年ごろから次の事業展開を検討していました。当時既に顧客である自動車メーカーやTier-1メーカーのメキシコ進出ラッシュがあり、部品の現地調達が加速することが十分予測され、メキシコでの工場設立を決断しました。当初は自前の工場を持つ計画でした。しかしトランプ大統領の登場でNAFTA協定見直しが想定され、ジェトロ「新輸出大国コンソーシアム」専門家のアドバイスもあり、リスクヘッジやカーメーカーのモデルチェンジの立ち上げに間に合わせるため、レンタル工場にして工場稼働時期を早めたことで一定量の受注をもらうことができました。メキシコでは労務管理(従業員の定着率が悪い)、特有の税制や会計処理など工場管理や会社経営で苦労する面も多いのですが、専門家から的確なアドバイスを受け、必要に応じて関連業者の紹介を受けるなど経営判断のみならず、実務面でも助かることが多かったと思います。
進出成功は顧客ニーズの把握と情報収集が決め手
進出前に現地の市場調査を含め、顧客ニーズを的確に把握することが重要です。そのためにはできるだけ多くの企業を訪問し、多くの人の生の声を聴き、自社で何ができるか十分に検討する必要があります。弊社の場合は、ジェトロの支援によって、日本では取引実績のない顧客からも受注できたことが成功の要因の一つとなっています。さらには、工場設立の手続きや現地の環境規制や労働安全衛生規制についても事前に情報収集に努め、進出後に慌てないように準備しておくことも大事です。このように、事前の現地情報収集や顧客ニーズの把握を徹底的に行うことで、資金や時間といった大事な経営資源のロスを最小化することが海外進出では重要です。また、人材育成の面では、海外産業人材育成協会(AOTS)の研修生受け入れプログラムなども活用しながら、工場稼働前に6名のメキシコ人を将来のリーダー役として日本で6カ月間の研修を実施し、工場の立ち上げを日本人と一緒に経験させたことも成功の要因の一つだと思います。
日本の常識は海外の常識にあらず
海外進出をされた企業はどこも体感していることだと思いますが、「日本の常識は海外(メキシコ)の常識ではない」ということです。メキシコでは教育や貧富の差が想像以上に大きく、治安面の課題や古い労働習慣などが依然として残る国であり、ラテン系特有の時間にルーズで無責任なところが多く見受けられます。特に労務管理面では、従業員が突然欠勤したり、折角教育研修をしても、短期間で転職するケースが多く、人材確保のために常に時間、資金、人材を注入しなければならず、大きな工数負担となっています。日本では想像もつかない経営環境ですが、このような課題を克服して初めて当初の経営目標を達成できると思います。したがって、進出前の情報収集や進出済み企業の声を聴くことは本当に重要な活動だと思います。また、海外工場の立ち上げには想定以上の出費がかさむことがありますので、できるだけ余裕を持った資金計画を組むことをお勧めします。
専門家からのポイント
トランプ大統領のNAFTA大幅見直しによるメキシコ自動車産業のリセッションを考慮し、また、2019年の日系自動車メーカーのフルモデルチェンジに間に合わせるべく、小川工業のメキシコ戦略は自社工場建設からレンタル工場へと方向転換しました。小川社長が示したベクトルを関係者が理解して、工場建設、部品の受注活動、新部品の量産という三重苦を乗り越え、工場稼働、受注部品の量産を順次開始されました。私は、特に不安な気持ちになる関係者の心の支えになることを心掛け、海外出張への同行、顧客との打ち合わせに参加して支援を続けました。
ご利用いただいたジェトロのサービス
- 新輸出大国コンソーシアム
日本企業の海外展開を支援する全国のあらゆる支援機関が結集し、海外展開にご関心をお持ちの中堅・中小企業の皆様へワンストップの支援サービスを提供します。
小川工業株式会社
和歌山県橋本市
http://www.ogawa-industry.co.jp/
代表者:小川 潔
設立年:1972年6月
従業員:290名
事業内容:建築、自動車向け高精度金属部品の製造・販売
2019年9月