株式会社守半總本舗
海の外に一歩踏み出すことが大事。踏み出せば、世界が変わり見え方も変わる。既成の固定概念が払拭される
伝統的な地域産業である大森海苔の伝統製法を継承する海苔とお茶の専門店を展開。同様に、日本伝統楽器である和太鼓のプロ奏者でもあり、食と音楽のコラボレーションで香港、シンガポール市場を開拓し、さらにタイ、欧州への進出を図る
東京都大田区 ウェブサイト
- 展開国・地域:
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2017年 香港
2018年 シンガポール
2019年 タイ - 事業内容:
- 海苔とお茶の販売
始まりは幕張で開催されたFOODEX JAPANから
大森(東京都大田区)は江戸時代からの歴史を受け継ぐ海苔生産の要の地であり、守半總本舗も90年を越える伝統を持つ老舗です。昨今の日本の海苔市場は残念ながら停滞気味のため、その状況を打開すべく同業若手で一念発起し新製品を共同開発しました。幕張で開催されたFOODEX JAPAN 2017に出展したところ、接触してきたバイヤーの半分が外国人でした。以前、英国人から「この黒い紙の様なものは何?」と言われたトラウマがあったものの、海外でも受入れられるのではと思い直しました。また、私の主催する日本伝統の和太鼓プロチームが、たまたま同時期に駐リトアニア日本大使に招へいされパフォーマンスを披露しました。その際、大使から勧められて同地の農業関係展示会で、大使館の料理人が手巻き寿司に弊社の海苔を使用、紹介されました。その時、実はリトアニアでは寿司屋が多いと聞いて、ここでも海苔の海外での可能性を感じました。そこへ前述の展示会で初老の紳士から「輸出に興味ありませんか?」との問いを受けました。
香港在住経験25年のジェトロ専門家とのめぐり逢い
声を掛けたのは、香港在住歴25年というジェトロ「新大国コンソーシアム」の専門家でした。海外の可能性を感じていたので、早速支援を申し込み、専門家と二人三脚での海外市場開拓が始まりました。シンガポールを拠点として東南アジア市場を開拓したら?とのジェトロの助言をもとに、シンガポールからも多数バイヤーが来訪し、専門家の地の利もある香港のFOODEXPOを視察。その後すぐに専門家のアレンジで香港出張。日本人商工会議所、日本人倶楽部、高級日本食料理店の料理長を立て続けに訪問。和太鼓が功を奏し、商工会議所からは、香港行政20周年記念式典でのパフォーマンスを頼まれるとともに手巻き寿司提供の機会を得ました。また、料理長にも、海苔の品質、食感、味を気に入ってもらい、お店で使用するだけでなく、シンガポールなどの料理人仲間にも紹介してもらえました。幸い、香港市場では手巻き寿司文化が浸透しており、海苔の販売は順調に進んでいます。
地域産業活性化と日本文化の海外普及へ
今後の計画は、大森乾海苔の組合で地域団体商標を取ることです。これから申請を行い、うまくいけば2019年中に取得予定です。さらに、来年度はその国際版ともいえる「GI」の取得を計画しています。取得後は、「本場大森乾海苔」の知名度を上げ、和太鼓とともに日本食文化の海外普及への一翼を担いたいと思っています。また、東南アジア市場を攻略後、次は、ポーランドから和太鼓の招へいを受けていることもあり、欧州市場への進出を考えています。海外市場への進出は、小さな企業にとってはハードルが高いものですが、自社製品の品質、競争力に自信があれば、思い切って一歩踏み出してみると結構評価をしてもらえると思います。また、そこには違う文化、違う世界があり、日本を見る目も変わって、今までの固定概念が払拭され、目から鱗が落ちることも多いと思います。最後に、経験豊富な専門家に声を掛けられたという幸運もありましたが、一歩踏み出してみてよかったと思います。
専門家からのポイント
海外の和食の代表格「寿司」に欠かせない海苔も、近年隣国製品との国際競争にさらされている状況にあります。守半總本舗は、地元東京・大森の海苔問屋業界有志とともに、今は歴史となった「大森海苔」の伝統製法を他県の海苔養殖場で見事に再現されました。専門家が調査・リスト化した、香港・シンガポールの和食店・輸入業者の情報をもとに、質の良い海苔を求める事業者を開拓されました。特徴ある伝統製法の復刻品を、直接マーケティングすることで、地元層にも人気の海外寿司店の商材採用に成功されました。
ご利用いただいたジェトロのサービス
- 新輸出大国コンソーシアム
日本企業の海外展開を支援する全国のあらゆる支援機関が結集し、海外展開にご関心をお持ちの中堅・中小企業の皆様へワンストップの支援サービスを提供します。
株式会社守半總本舗
東京都大田区
http://morihan.co.jp/
代表者:湯澤 元一
設立年:1969年9月
従業員:25名
事業内容:海苔とお茶の販売
2019年9月