有限会社橋口水産
社長自ら動くこと。現地に出向いてこそ分かることがあります
潮流の早い五島列島の海域で、独自に開発した生エサをベースに給餌したブリ、ヒラマサ、マグロの養殖を行う。2016年から商社経由で輸出開始
長崎県南松浦郡 ウェブサイト
- 展開国・地域:
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2016年 米国
2018年 中国 - 事業内容:
- ブリ、ヒラマサ、マグロの養殖および加工
輸出は当たり前。だから、自社の事業として取り組む
随分前から米国向け輸出原料として鹿児島や熊本の企業へブリの活魚を供給していました。徐々に輸出用原料の受注が増えてきて、特に2010年ごろに著しく受注が増えたことで、主体的な輸出に大きく舵を切ることにしました。原料として供給しながら、米国のマーケット情報を独自に入手したり、取引先からも有益な情報提供があったお陰で、弊社で養殖したブリに対するニーズが客観的に分析できたことも大きな弾みとなりました。弊社は、五島近海で取れる新鮮な生エサをベースに給餌し、また9年かけて魚用の高機能サプリメントを飼料メーカーと共同開発するなど、本当においしいブリの養殖に努めてきました。
海外向け認証取得への取り組み
海外市場を目指すには衛生管理手法HACCPの認証取得は必須のため、HACCP認定工場を作りました。また、ハード面では米国と中国など弊社商品の消費拡大が見込まれる国の食品施設の登録を行ったり、ソフト面では輸出に必須なブランドの確立のため、商品の規格の検討、日持ちをさせるための実証・検証など、飼料メーカーとの共同開発も行ってきました。海外市場への理解が進むと取り組むべき課題も見えてきます。弊社は米国向け輸出商品の梱包に真空パックを利用していますが、貨物到着後の商品の理学的検査により鮮度が落ちてしまい、顧客ニーズに応えられていませんでした。そこで、2017年に、弊社のHACCPプランを米国食品医薬品局(FDA)に認めてもらった上で、理学的検査なしの留置であるDWPE(Detention Without Physical Examination)を弊社の真空パックのブリにも適用してもらう申請を行った結果、2018年に受理されました。ジェトロの「新輸出大国コンソーシアム」専門家や現地パートナーの協力も得ながら根気強く対応しましたが、想像以上に時間と労力がかかりました。現在はスムーズな通関が実現しています。2019年2月20日には、長崎県内で第一号となる対EU輸出水産食品認定施設として認定され、EU向け輸出も可能になりました。
食の安全の可視化や合理性の追求で会社に勢い
輸出への対応では、瞬時に決断を求められることが多くあります。ジェトロが運営するジャパンパビリオンのある見本市に参加する際は、社長自らが現場に出向いてまずは動くことが前進する鍵だと思います。海外と日本の物事の捉え方の違いは歴然として、海外は合理性を求めます。輸出のメリットは契約に基づき計画生産・販売ができることであり、これも国内とは全く違う商習慣といえるかもしれません。この海外のビジネスの方法などは、会社の運営と利益訴求に大きな役割を果たしています。また、弊社のブリはEUにおいてもその質の高さに大変驚かれます。米国の高級外食店で提供されていることもPRポイントとなっています。ただおいしいというだけではなく、米国やEU向けに製造のプロセスが安全とのお墨付きをもらっていなければ、いくら国内の評価が高くとも誰も納得してくれません。食の安全は見える化して、管理していくことが世界の潮流です。これまでのあらゆる蓄積と経験を生かし、今後ますます海外での販路拡大を図りたいと思います。
専門家からのポイント
橋口水産は五島列島にマグロ、ブリ、ハマチの養殖池を持ち、養殖と国内販売を主に手掛けています。社長の輸出志向の熱意もあり、ターゲットを米国、中国に絞り、その環境作りの投資をアドバイスしました。米国ではブリ、ハマチの需要が年々高まり、特に生鮮物が冷凍物より需要があり値段も高いのですが、生鮮の真空パックはボツリヌス菌のリスクが高く、このリスクを克服するためにはFDAのEXEMPTION認可の取得が必須のため、米国弁護士を紹介し認可を取得しました。また、同時にHACCP EUの認可も取得され、EU向けのブリ、ハマチの輸出も可能になりました。
ご利用いただいたジェトロのサービス
- 新輸出大国コンソーシアム
日本企業の海外展開を支援する全国のあらゆる支援機関が結集し、海外展開にご関心をお持ちの中堅・中小企業の皆様へワンストップの支援サービスを提供します。
有限会社橋口水産
長崎県南松浦郡
https://hashiguchi-suisan.com/
代表者:橋口 直正
設立年:1992年5月
従業員:27名
事業内容:ブリ、ヒラマサ、マグロの養殖および加工
2019年9月