株式会社ビースポーク(Bespoke Inc.)

「わからない」という不安を、世界からなくす

ローカルな情報を、ローカルの人がホットに伝えるようなchatbotを開発している、株式会社ビースポーク。そのサービスが、緊急時のコミュニケーションのツールとして、今、世界の注目を集めています。ジェトロがつなぐ人脈を、どのようなビジネスチャンスをつくっていったのか、同社のCEOである綱川明美氏に伺いました。

展開国:
米国
事業概要:
多言語対応可能なチャットボット「Bebot」の開発、運営

代表者:綱川 明美

御社の事業内容と創業の経緯を教えてください。

旅先で、地元の人からおすすめのお店や場所を教えてもらうのが楽しくて、そんな情報を簡単に知ることができれば便利だなと思って開発したサービスが「Bebot(ビーボット)」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますです。世の中を見渡したところ、同様のサービスがなかったので、世界8カ国からトップレベルの開発者や研究者を集め、自分たちで作ることにしました。

「Bebot」は、緊急時のコミュニケーションのツールとしてもサービスを提供しています。その発想のもとになったのは、2011年の東日本大震災で感じた恐怖です。私は20階にある某トレーディングフロアで働いていて、そこで被災しました。モニターや天井が落ちるなか、メンテナンスの行き届いていない非常階段から避難するという、まさに命の危機を感じる経験でした。

そのとき一緒に働いていた外国の方たちは、さらに情報のない状態。何が起こっているのかわからず、パニックに陥り、悲鳴を上げている人もたくさんいました。あのとき、知りたい情報を手に入れられるようなプラットフォームがあったら、あんな恐怖は感じなかったのではないか。このような個人的な思いから始めた事業でした。

海外進出を目指したきっかけは?

2015年に起業して、訪日外国人向けにサービスを展開していたのですが、日本で使っていた方から帰国後に問い合わせをたくさんいただくようになりました。これは需要があると感じ、2019年から本格的に取り組みを始めました。

ジェトロのメンターとは、出資を受けているベンチャーキャピタル(VC)の紹介で出会いました。それがRon Drabkinです。彼は、ジェトロ・グローバルアクセラレーションハブ・シリコンバレーのメンターで、3~4社を売却した実績を持つ連続起業家でもありました。Ronからは、さまざまな案件や人材の紹介を受けました。彼の口癖は「話を聞くだけならタダだから」。すごく軽い気持ちにさせてくれるので、ちょっとした背中の後押しになりましたね。また私たちのサービスを知ってもらう中で、Ronも投資家として参加してくれることになりました。

そんなRonが「魔法使いを紹介してあげる」とつないでくれたのが、シカゴ運輸局元長官のGabe Kleinです。彼はアメリカの政界や運輸業界に太いパイプを持つ人物で、サービスやプロダクトについて話すと非常に興味を示しておもしろがってくれたのですが、具体的なビジネスの話には結びつきませんでした。でも、この出会いをなんとか生かしたい、そう思ってRonに再度相談したところ、Gabeにアドバイザーになってもらうよう打診してみようという話になり、再度アレンジしてもらった電話会議で依頼した結果、チームとして巻き込むことに成功しました。

ジェトロを経由した人脈で得られたメリットは?

Gabeには、アメリカでのサービスの打ち出し方について、アドバイスを受けました。当初は観光案内的な側面をクローズアップするつもりだったのですが、Gabeは「絶対にエマージェンシー・コミュニケーションのほうがいい」と勧めてくれました。アメリカでは公共交通機関の事故や遅延に関する情報を、一般の方が共有する手段が極端に少なかったからです。

また、最初は空港を攻める予定でしたが、Gabeが「自治体とメトロに行きなさい」とアドバイスしてくれました。これはアメリカの空港事情によるもので、ターミナルや滑走路の区画ごとに、さまざまな企業が入り込んでおり、ストラクチャーが異なるため、決裁に非常に時間がかかるためです。スピード感が求められるスタートアップでは、それがネックでした。

そこで、Gabeを通じてワシントンDCのメトロにコンタクトを取り、緊急時のコミュニケーションとしてのツールに大きな魅力を感じていただきました。アメリカのメトロは、電車が正面衝突するような大事故がたびたび発生しています。その際のクレーム対応に非常に腐心していたため、当社のサービスに大きな期待を寄せてくれたのです。

現地法人の設立でも、ジェトロをご活用いただきましたね。

アメリカで事業を展開するにあたり、拠点を設立する必要もありました。そこで、Ronや日本人メンターの弁護士・竹内氏にアドバイスを求めました。専門家に尋ねたのは、日本とは法令が異なるため、アメリカではイリーガルになるケースもあるからです。たとえば、ストックオプションは、日本では会社を辞めたあとに失効するのが慣例ですが、アメリカでは認められていません。そのような問題をどのようにクリアしていくのか、意見や提案が参考になりました。

それらを踏まえて、2019年7月にシリコンバレーに現地法人を設立しました。翌8月には3年越しで交渉を続けてきた元Google XのCFO、Tobias Wessel氏を迎えることにも成功しました。それ以来、緊急時のコミュニケーションの件で、国連の会にも呼んでいただけるようになり、オーストリア政府の重鎮の方など、キーパーソンとの人脈も広がっており、ビジネスのチャンスが急速に拡大しています。

今後の展望を教えてください。

2019年末から、コロナウイルスが世界で猛威を振るっています。当社も緊急時のコミュニケーションの一環として、コロナウイルスに関する情報を提供するチャットボットをリリースしました。これは、日本政府だけでなく南米、アフリカ、イタリア、クック諸島など多方面から関心を寄せられており、ユーザーからも大きな反響を得ています。

今後の課題としては、施設が発信したい情報と利用者が求めている情報をいかにマッチングさせていくかということです。例えば、ユーザー目線に立てば、知りたいのは政府が発表する感染者や死亡者の数ではなく、「今日この観光スポットは訪れて安全なのか?」という情報です。私どもでは世界精鋭のスタッフをそろえているので、開発する技術はあります。あとは情報ソースをどこから持ってきて、どのように伝えていくのか、ということが重要になってくると思います。

これまで、グローバル・スタンダードとなるサービスを生み出したいと、なかば冗談のように話してきました。しかし、時世の流れや周りの熱量を感じ、その夢がにわかに現実味を帯びてきています。今後は欧州での拡大展開を考え、ウィーンやロンドンへの進出に着手しています。ロンドンにはジェトロのグローバル・アクセラレーション・ハブがあるので、またストックオプションなど会社設立に関するアドバイスを受けたいと考えています。そして、夢の実現を目指したいですね。

ご利用いただいたジェトロのサービス

株式会社ビースポーク

東京都渋谷区渋谷2丁目21−1
https://www.be-spoke.io/jp/外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
代表者:綱川 明美
設立年:2015年10月
事業概要:多言語対応可能なチャットボット「Bebot」の開発、運営

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