柴沼醤油醸造株式会社
輸出有望案件支援サービスを活用、輸出額は約8倍に
1688年創業の同社は、江戸時代の関東三大醸造地のひとつで「江戸の御用蔵」とされ、最盛期19軒の醤油蔵があった土浦で唯一残る醤油醸造会社。80もの杉の木桶を使い、江戸時代から続く伝統的な醸造方法で、無殺菌、塩水無調整の生醤油を作る。木桶で仕込む醤油蔵としては全国屈指の規模で、世界22カ国・地域に輸出している。
茨城県土浦市 ウェブサイト
- 海外ビジネス経験
- :あり
- 目的
- :輸出
- 対象国・地域
- :スイス、オーストラリア、フランス、イギリス、米国、マレーシア、中東等 22カ国

百年木桶仕込み生醤油「お常陸」(左)、木桶仕込み本醸造濃口生醤油「紫峰の滴」(中)、柴沼醤油 母屋前(右)
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ジェトロ活用のメリット
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経験豊富で人脈もある専門家が、海外企業との商談や展示会に随行することが大変心強く、海外ビジネスのノウハウを若手社員に伝授してもらっている。
海外での知名度がない中小企業にとっては、パビリオンの集客力、支援、安心感は大変ありがたい。2014年にジェトロ茨城が開設し、今まで以上に相談しやすくなり、地元での商談機会も増えた。
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ご利用いただいたジェトロのサービス
300年以上の歴史を持つ伝統の醤油が海外へ
同社18代目社長である秀篤氏が家業に戻った2009年頃、国内の醤油業界は人口減、単価減、和食減という三大減に苦しんでいた。こうした中、ある商社からオーストラリア向け輸出の声がかかり、海外展開に取り組むこととなった。
海外取引のノウハウはまったくなかったが、実際に現地に行ってみると貿易手続きなどは意外と難しくないことが分かった。しかし、現地のレストランに、既に使用している醤油を切り替えてもらうのは容易ではなく、何度も現地に足を運び、現地商社と一緒に営業してまわった結果、他店との差別化を狙うレストランが前向きに取り扱いを検討してくれた。こうした取り組みを通じ、自社の品質やこだわり(木桶、無殺菌、塩水無調整)などに対しては、醤油が当たり前の存在となっている日本よりも、海外での反応の方がよいことに気がついた。
その後、オーストラリアには社員を13年から1年間駐在させ、当初50ケースだった輸出量は現在ではコンテナ単位での出荷にまで拡大している。
外国語ができる社員はいるものの海外ビジネスのノウハウを有する社員がいなかった同社だが、オーストラリアで輸出に手ごたえをつかみ、他国への展開を計画していた。その矢先、11年3月、東日本大震災が発生。幸いにも蔵が無事だった同社は、ジェトロが震災復興支援スキームとして、被災地の企業には無料で展示会に出展できるよう支援していることを知り、ジェトロを活用して輸出を伸ばすことにした。

ANUGA 2015(ケルン)

Gulfood 2015(ドバイ)
輸出有望案件支援サービスを活用、輸出額は約8倍に
12年、ジェトロがジャパンパビリオンを組成する、パリで開催のSIAL(世界最大級の国際総合食品見本市)に初出展した。スイスの大手回転寿司チェーンから引き合いがあり、醤油のプライベートブランド(PB)製造の受注に成功、輸出ビジネスは軌道に乗り始めた。
13年にはジェトロの輸出有望案件支援企業に採択され、経験、人脈が豊富なジェトロ専門家の支援も得て、欧米、アジア等で開催される展示会に積極的に出展した。
15年に初めて出展したドバイで開催されるGulfood(中東最大級の国際総合食品見本市)で、新たに開発したアルコールフリーの醤油の現地高級レストランへの納入が決まり、継続出荷につながった。小ロットでのPBの受注やアルコールフリー醤油の開発は、小回りの効く中小企業ならではの強みだ。
輸出有望案件支援企業となって以降、輸出額は約8倍に拡大、輸出先は現在22カ国・地域にのぼる。輸出を大幅に伸ばすことに成功した同社は、輸出パートナーについては、「1カ国1商社」と決めている。相手側の社長の顔が見える安心感があるからだけでなく、柴沼の醤油を苦労して一緒に広めてくれるパートナーを大切にしたいとの思いからだ。パートナーとの信頼関係を大事にしつつ、同社はさらなる輸出拡大に取り組んでいく。
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柴沼醤油醸造 (株)
代表取締役社長 柴沼 秀篤 氏 -
今後も欧州を中心に新たな市場を開拓し、売上全体に占める輸出比率10%を目指し、さらに輸出を拡大したい。

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ジェトロ
農林水産・食品分野専門家 田中 均 -
醤油は、大手メーカーの現地産と第3国産による価格競争が激しいが、同社は木樽で熟成させた本物の生醤油で、まろやかさと味の違いで勝負。海外展示会に数多く出展した結果、22カ国・地域に輸出するに至った。

ご利用いただいたジェトロのサービス
- 展示会・商談会への参加
海外販路開拓のきっかけとなる展示会・商談会への出展をサポートします。 - 貿易投資相談
本部(東京)、大阪本部、国内各地の貿易情報センターなどでは、お客様から電話、Fax、E-mailで寄せられるご相談にお答えします。 - 輸出有望案件支援サービス
輸出戦略の策定から契約締結まで専門家がお手伝いします。優秀な製品を持っていながらこれまで輸出経験がない、あるいは輸出ビジネスを躊躇している中小企業が対象です。
柴沼醤油醸造株式会社
茨城県土浦市虫掛町374
Tel:029-821-2400
http://www.shibanuma.com/
代表取締役社長:柴沼 秀篤
従業員:60名 資本金:1,000万円
事業内容:醤油の醸造、各種調味料の製造
2016年3月