EEUサミットが開催、統合加速を求める声も

(ロシア、ベラルーシ、カザフスタン、アルメニア、キルギス、モルドバ)

欧州ロシアCIS課

2018年05月16日

ユーラシア経済連合(EEU)は5月14日、ロシア南部のソチで加盟国5カ国(注1)の首脳会談(サミット)を開催した。EEUを通じてモノ、サービスや資本、労働力の移動などの地域経済統合をより深化させることで一致した。

2018年のEEU議長国であるロシアのプーチン大統領は会議の冒頭、2018年のEEUの優先課題は、物品、資本、労働力の自由な移動を妨げる規制などの撤廃と発言。ロシアが協力を推進する分野として、原子力・再生エネルギーや環境、医療、宇宙開発、デジタル経済分野を挙げた。

また、EEU域内の統一技術規則の制定に向け引き続き作業を進め、EEU委員会内には各国の基準・認証機関による専門会合を設置。農業分野では新たに担当大臣会合を創設、域内の農業政策や域外への輸出政策の調和を目指す。輸送分野では域内輸送発展政策の策定や各国の政策調整を行う機関を創設する意向を示した。

一方、他の加盟国首脳からはEEUによる貿易増・経済効果を肯定的に評価するも、経済統合プロセスの遅れに不満をにじませる発言も出された。5月8日に首相に就任したアルメニアのニコル・パシニャン氏(2018年5月9日記事参照)は、同国は引き続きEEUで協力を推進するとしながらも、「国民が統計上の数字としてではなく肌で経済の活性化を感じ取れなければならない」と述べ、具体的成果とスピード感を重視する意向を明らかにした。

ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領は、「われわれ(政府首脳)の決定より、特定企業の利益が優先されている」と述べ、地域統合に向けた動きが既得権益を持つ企業の政治力に阻害され、実現に向かっていないことに不満を表明。天然ガス、原油、石油製品分野での共通市場の創出などを強く希望した。

キルギスのソオロンバイ・ジェエンベコフ大統領は、貿易額の増加を評価しつつも、EEU域内で(同国が多く供給する)出稼ぎ労働者が同一の権利・社会保障を受けられる制度整備を要請。2017年秋に発生したカザフスタンとの食品検疫問題など(2017年11月27日記事参照)を踏まえ、EEU委員会の迅速・柔軟で効率的な活動や加盟国間の紛争解決能力の強化を求めた。

サミット前には各首脳のバイ会談も実施され、各国間で個別の経済交流推進が確認された。また、今回のサミットではCIS加盟国のモルドバにEEUのオブザーバー資格(注2)が認められた。次回サミットは2018年11月末~12月前半にサンクトペテルブルクで開催の予定。

(注1)ロシア、ベラルーシ、カザフスタン、アルメニア、キルギス。

(注2)発言権はないが、EEU関連会合やイベントにモルドバ政府関係者が出席可能。

(高橋淳)

(ロシア、ベラルーシ、カザフスタン、アルメニア、キルギス、モルドバ)

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