水素社会に向けた動きが続く中国

(中国)

上海発

2019年07月12日

中国では、水素燃料電池の実用化に関して各地で発展計画が発表されているが(2019年6月18日付地域・分析レポート参照)、2019年6月末から7月初めにかけて、水素燃料電池に関連する各種の発表が行われた。

6月27日には、民間団体の「水素エネルギー連盟」より「中国水素エネルギーと燃料電池産業白書」が発表された(以下、白書)。白書によると、中国は世界最大の水素大国で、工業による水素生産能力は2,500万トンを有する。水素需要量が2030年に3,500万トン、2050年には6,000万トンに近づく(水素需要と供給源の構成などは表参照)とされており、2050年には水素の利用により約7億トンの二酸化炭素が削減できる。また、2050年には、交通領域で2,458万トンの水素が利用され、8,357万トンの原油が削減でき、工業分野で3,370万トン、建築その他領域では110万トンの水素が利用されるとしている。

表 水素需要量と供給源の構成見通し

6月28日には、「長江デルタ水素エネルギーと燃料電池産業イノベーション発展白書」(以下、発展白書)が公表された。それと同時に、「長江デルタ水素基礎施設産業連盟」(以下、産業連盟)の設立も発表された。

発展白書では、長江デルタは工業副生水素(注)の生産量が全国トップで、水素関連企業の層が比較的厚いと紹介している。また、水素エネルギー産業の特許申請人の帰属地としては、北京がトップだが、江蘇省が2位、上海市が4位、浙江省が5位、安徽省も12位で、長江デルタ地区は中国内で最も多い特許数を占める。

産業連盟については、上海石化、電能集団、新奧燃気、浦江気体、重塑科技、国金証券、上海市発展改革研究院など、水素産業サプライチェーン企業、研究開発および金融関係企業の30社余りで構成される。産業連盟は、長江デルタ水素エネルギー基礎施設のトータルソリューションの提案とそれを実施する主体となり、長江デルタ水素エネルギー産業の気体、自動車、ステーション、利用の一体的発展を推進するとしている。

また7月5日には、豊田汽車(中国)が中国の商用車メーカー向けに燃料電池部品の提供を開始すると発表した。同社によれば、4月の北京汽車子会社の福田汽車への燃料電池部品提供に続き、第一汽車、蘇州金龍、上海重塑にも燃料電池部品を提供し、燃料電池商用車の展開、中国の水素エネルギー社会の実現に貢献するとしている。

(注)製鉄所や化学工業などで副産物として発生する水素。

(高橋大輔)

(中国)

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