EBRD、ロシアの経済成長率を下方修正

(ロシア、CIS)

欧州ロシアCIS課

2018年05月15日

欧州復興開発銀行(EBRD)は5月9日に地域経済見通しを発表、ロシアの2018年のGDP成長率見通しを前回(2017年11月発表)の1.7%から1.5%に下方修正した。その理由として、原油価格変動のリスクのほか、投資保護に向けた改革の遅れや地政学的緊張、米国の対ロシア追加制裁の影響を挙げている。一方、消費や投資が戻りつつあること、マクロ経済の安定、原油価格の高値傾向は、ロシアの経済成長を引き続き支えるとしている。

同見通しは併せて欧州CISとコーカサス、中央アジア地域・諸国の2018年、2019年のGDP成長率見通しも発表している(表参照)。2018年の見通しについて、欧州CISとコーカサス地域全体の経済成長率は前回見通しより0.3ポイント上方修正され、前年比0.7ポイント増の3.0%となった。

表 ロシアCIS地域のGDP成長率

域内ではアゼルバイジャンとベラルーシがそれぞれ上方修正。理由として、前者は石油・天然ガス資源価格の上昇と銀行セクターの改革、金融緩和など、後者は貿易相手国の需要増、国内消費の回復、国際金融市場からの順調な資金調達などを挙げている。

中央アジア全体では、2017年比で減速する経済成長率見通し(4.4%)に変化はない。原油価格の上昇と固定資本投資の増加でカザフスタンが上方修正された一方、キルギス、トルクメニスタン、ウズベキスタンは下方修正された。下方修正の理由として、キルギスはインフラ投資と出稼ぎ労働者の国外からの送金が経済を支えるが、金産出量の減少やIMFプログラムによる財政赤字幅の制限で公共投資の効果が限定されることなどを挙げる。

トルクメニスタンは過去2年で輸出が伸びていないこと、政府の公共投資計画の裏付け予算の確保が不透明とする。ウズベキスタンでは現在進行中の為替自由化政策とそれに伴う通貨切り下げによるインフレが経済に与える影響などを加味。なお、トルクメニスタンは統計の信頼性に疑問があること、ウズベキスタンは統計取得手法の変更で正確な経済予測は困難としている。

EBRDは2016年から5月と11月の年2回、地域経済見通しを発表している。

(高橋淳、市谷恵子)

(ロシア、CIS)

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