2014年最低賃金案を公表、最大17%上昇に

(ベトナム)

ハノイ事務所

2013年10月02日

国家賃金評議会は国内・外資系企業の2014年の最低賃金引き上げに関する政令改正案を政府に提出した。最低賃金の引き上げ率は月給で15.2〜17.0%になる。インフレ率が落ち着いているにもかかわらず引き上げ幅が大きいため、労働集約型の製造業にとってコスト負担が大きくなるものとみられる。

<地域1の最低賃金は275万ドンに>
国家賃金評議会は2013年5月1日に施行された改正労働法において新設された政府の諮問機関で、労働傷病兵社会問題省、ベトナム労働総同盟、中央の雇用代表組織の代表者から構成されている(現行労働法第92条)。

ベトナムの最低賃金は4地域に分けて設定されており、今回の改正案においては地域区分の変更はない。最低賃金は月給を基本としており、手当は含まない。2011年5月から地場企業と外資企業の統一賃金となっている。

当地報道によると、改正案は月給で地域1が235万ドン(約1万1,000円、1ドン=約0.0047円)から275万ドン(2013年からの上昇率17.0%増)、地域2が210万ドンから245万ドン(16.7%増)、地域3が180万ドンから210万ドン(16.7%増)、地域4が165万ドンから190万ドン(15.2%増)となっている(表参照、2012年12月7日記事参照)。また、ベトナム共産党が2015年までに最低賃金を310万ドンまで引き上げるという目標を掲げているため、今後も引き上げは続くものとみられる。

月額最低賃金

<日系企業は大幅な上昇率に困惑>
同評議会の議長を務めるファム・ミン・フアン労働傷病兵社会問題省次官は「最低賃金は労働者の最低限の生活が保障され、一方で企業が事業をする上での健全性が保たれなければならない」と説明している(当地報道)。

その上で同次官は今回の最低賃金引き上げ案について、「ベトナム労働総同盟側の提案は最高で36%の引き上げだったが、経済成長の鈍化による企業側の経営状況を考えた場合、大幅な引き上げはコスト負担が大きくなる。このため同評議会で検討の結果、現在の改正案になった」と述べ、労使双方に配慮したものだとしている。同次官は、引き続き最低賃金に関連する機関や組織に意見聴取すると述べている。

しかし、当地日系製造業は、9月の消費者物価指数上昇率が前年同月比で6.3%と安定しているにもかかわらず大幅な引き上げ案となっているとして、困惑の色を隠せない。また、2013年の国家公務員の最低賃金は115万ドン、前年比9.5%増と、上記の最低賃金と比べて金額も引き上げ幅も小さい。このため、当地日系企業の一部からは、少なくとも国家公務員の引き上げ率に合わせて欲しいとの声も聞かれる。今回の引き上げが実施されると、1,000人以上の従業員を抱える労働集約型の製造企業にとって賃金コストが大きくなり、影響が出るものと思われる。

(佐藤進)

(ベトナム)

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