インド、ガソリン・軽油価格を実質4年ぶりに引き上げ
(インド)
ムンバイ発
2026年05月20日
インド国営石油会社は5月15日、ガソリンおよび軽油の小売価格をそれぞれ1リットル当たり約3ルピー(約5.1円、1ルピー=約1.7円)引き上げた(「タイムズ・オブ・インディア」紙5月15日)。インド国内では、2024年3月に総選挙を控えた一時的な特例措置として2ルピーの引き下げが実施されたのみで、2022年4月以降は価格が据え置かれていた。今回の引き上げ措置は、実質的に4年ぶりとなる。
これにより、首都ニューデリーではガソリン価格が従来の94.7ルピーから97.7ルピーへ、軽油価格が87.6ルピーから90.6ルピーへとそれぞれ上昇した。主要都市でも値上げが実施され、ムンバイではガソリンが106.6ルピー、コルカタでは108.7ルピー、チェンナイでは103.6ルピーへと引き上げられた。加えて、他の複数の都市でも100ルピーを超える水準となった。軽油についても、各都市で約3ルピーの引き上げとされている。
今回の値上げの背景には、中東情勢の悪化に伴う国際原油価格の高騰がある。特にイラン情勢やホルムズ海峡を巡る緊張の高まりにより供給不安が強まり、原油価格は戦争勃発前の2月時点の1バレル約69ドルから110ドル超まで上昇した。インドは原油の約9割を輸入に依存しており、国際価格の変動の影響を受けやすい。政府はこれまで、国内価格の据え置きや税制措置などを通じて価格上昇を抑制してきたが、国営石油会社の損失が拡大しており、値上げは不可避と判断した。
インドのハルディープ・シン・プリ石油・天然ガス相は、「国内には当面の供給途絶を回避するのに十分な燃料備蓄があり、約2カ月分の在庫を確保している」と述べている。その一方で、「原油価格の高止まりが続けば、国営燃料小売業者はわずか3カ月間で1兆ルピー近くもの損失を被る恐れがある」と警告している。インド準備銀行(RBI、中央銀行)のサンジャイ・マルホトラ総裁も「中東戦争が長期化すれば、最終的にガソリンや軽油の価格を引き上げる必要が生じるだろう」との見解を示している。
今回の措置は、家計や企業活動に一定の負担増となる一方、財政およびエネルギー供給の安定性を維持するための対応と位置付けられる。今後も中東情勢や国際エネルギー市場の動向次第では、追加的な価格調整が行われる可能性がある。
(野本直希)
(インド)
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