6月の米小売売上高、予想に反して前月比0.6%増も、関税による価格転嫁が表面化
(米国)
ニューヨーク発
2025年07月18日
米国商務省の速報(7月17日付)によると、6月の小売売上高(季節調整値)は前月比0.6%増の7,201億ドル(添付資料表参照)と、3カ月ぶりの増加となり、ブルームバーグがまとめた市場予想(0.1%増)を上回った。ただし、小売り統計はインフレ調整されておらず、6月の消費者物価指数(CPI)では、関税引き上げの影響で価格転嫁の影響が表れ始めており(2025年7月16日記事参照)、実質の伸び率はより小幅にとどまった可能性がある。なお、5月は同0.9%減(速報値、2025年6月18日記事参照)から改定されなかった。
自動車・同部品、フードサービスなどが押し上げ要因に
業種別にみると、13業種のうち10業種で増加し、幅広い分野で前月からの回復がみられた。特に自動車・同部品は前月比1.2%増の1,368億ドル(寄与度:プラス0.23)で、最大の押し上げ要因だった。4~6月には、自動車関税の適用開始前に(2025年4月3日記事参照)、消費者の駆け込み需要が進んだ影響があるが、現状は消費者の需要が満たされた状態にあるため、今後数カ月は需要が弱まると予想されている(2025年7月11日記事参照)。そのほか、小売り統計で唯一のサービス項目のフードサービスは同0.6%増の987億ドルで、前月からプラスに転じた。他方で、輸入依存度の高い家具や家電などでは足元で価格上昇が進んでおり、それぞれ0.1%減で減少に寄与した。
今回の結果について、パンテオン・マクロエコノミクスのシニア米国エコノミスト、オリバー・アレン氏は「関税による価格上昇を考慮すると、販売量は低調だった可能性が高い」と警告した。同社は、2025年第3四半期(7~9月)にはさらなる関税関連のコスト上昇が価格転嫁されると予想しており、この状況は「今四半期の商品に対する実質的な支出の停滞が続くことを示しているようだ」と指摘した(金融専門誌「バロンズ」7月17日)。
なお、消費者マインドは前月より悪化しており、5月の上昇分の半分近くが帳消しとなった。民間調査会社コンファレンスボードが6月24日に発表した6月の消費者信頼感指数は93.0(5月:98.4)となり、5.4ポイント減少した。内訳では、現在の雇用環境や経済状況を示す現況指数は129.1(5月:135.5)、6カ月先の景況見通しを示す期待指数は69.0(5月:73.6)と、いずれも前月より低下した(添付資料図参照)。
同社のグローバル指標担当シニアエコノミスト、ステファニー・ギチャード氏は「消費者の現状評価と将来への期待の両方が悪化の一因となり、指数は幅広い項目で低下した」と指摘した。同氏によると、記述式の回答では、関税は依然として消費者の関心事項の上位に入っており、経済や物価への悪影響に対する懸念と結び付けられている。
(樫葉さくら)
(米国)
ビジネス短信 b08c6b349aebb941