グリーンランド、親米政党を除く4党で大連立政権樹立
(グリーンランド、デンマーク、米国)
デュッセルドルフ発
2025年04月02日
デンマーク自治領グリーンランドで3月28日、議会選挙で最大議席を獲得した民主党など4党による連立政権樹立が合意された。同月11日の議会選(2025年3月13日記事参照)の結果を受けて、連立交渉が続いていた。
新政権は、親米派の第2党ナラレク党を除き、民主党、イヌイット友愛党、進歩党、連帯党の4党の大連立となる(添付資料表参照)。首相には、中道右派の民主党のイェンス=フレデリック・ニールセン党首が就任する。前首相のムテ・ボーロップ・エーエデ氏率いる左派政党のイヌイット友愛党も引き続き政府に残り、同氏も財務・租税相を務める。前政権でイヌイット友愛党と連立政権を組んでいた進歩党や、デンマーク残留を望む連帯党も政府入りする。これにより、与党は議会31の総議席中23議席を占めることになる。ニールセン次期首相は米国からの圧力に対抗するため、早期の政府樹立に向けて連立交渉を急ぐ必要があったとメディアに語っている(3月29日付AP通信)。
連立協約では、グリーンランドが持つ資源のビジネス上の価値に言及しつつ、外国からの投資呼び込みや連携を強化するとしたほか、外圧が増す中、デンマークからの独立については、デンマークとの経済協力を担保しつつ、民意に基づき、現実的なステップを踏むべきだとしている。
一方、米国のJ.D.バンス副大統領が28日、グリーンランド内の米軍基地を訪問した。ロシアや中国などが北極航路や北極資源に関心を示しているとし、米国が先んじなければ他国に利権が奪われてしまうと発言、また、デンマークはグリーンランドの人々やその安全保障に対して投資を怠ってきており、それが現在のドナルド・トランプ大統領の方針につながっていると述べた。
バンス副大統領の発言に対し、デンマークのラース・ルッケ・ラスムセン外相は不快感を示しつつも、北極地域の安全保障が現状のままでよいとは考えておらず、デンマークはこれに向けた投資を増強しているとする声明を英語で発表した。加えて、デンマークとグリーンランドは改善に向けた議論を米国としていく準備があるとも述べた。デンマークのメッテ・フレデリクセン首相も28日、自身のSNSで、バンス氏のコメントに言及し、同氏の発言は、グリーンランドの主権尊重をむしろ明言するものだとした。その上で、北極地域の安全保障ではNATOとしての取り組みが重要だと述べた。
グリーンランドのニールセン次期首相はバンス副大統領の訪問について、新政府の樹立を待たず、体制が整わない中での訪問は、グリーンランドに対して敬意を示すものではなく、遺憾だと述べ、29日にあらためて「グリーンランドは米国のものにはならない。われわれはわれわれ以外に帰属するものではなく、われわれの将来はわれわれが決める」と自身のSNSに投稿した。
なお、デンマークのフレデリクセン首相は4月2~4日にグリーンランドを訪問し、ニールセン氏らと今後に向けた会談を行う。
(福井崇泰、ペトラ・レーリング)
(グリーンランド、デンマーク、米国)
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