今夏の旅行を計画する米国民は過半数に満たず、インフレに対する足元や先行きへの懸念が重しに

(米国)

ニューヨーク発

2025年04月28日

米国の金融比較サイトのバンクレートが4月21日に公表した調査PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(注1)によると、今夏に旅行を計画している米国民は46%と半数に満たないことがわかった。また、2024年の同調査と比較すると、国内旅行の割合の上昇や、借り入れに対する姿勢の変化など、インフレに対する足元および先行きへの懸念の広まりなどを背景に、消費行動を見直す動きが出ていることが示唆されている。

調査によると、旅行を計画していない回答者のうち、その最大の理由として65%は「経済的な余裕がない」と回答した。この回答者の大多数が「日常の生活費が高すぎる」(68%)、「旅費が高すぎる」(64%)と答えた。そのほか、「ほかの経済的優先事項に重点を置いている」(45%)、「借金が多すぎる」(29%)との回答もあった。

2024年と比較すると、借り入れに対する姿勢にも変化がみられる。旅行を計画している人のうち、29%は旅行をするために借金を負うと回答しているが、2024年調査の36%から7ポイント低下した。借金の手段としては、「クレジットカードで分割払いにする」(23%、2024年26%)が最も多く、「後払いサービスを利用する」(5%、同8%)、「家族や友人から借りる」(4%、同6%)が続く点は2024年と同様だが、いずれの割合も低下した。世代別でみると、旅行のために借金をすると答えた割合は、ミレニアル世代(29~44歳)は34%(2024年30%)、Z世代(19~28歳)は31%(同25%)であるのに対し、X世代(45~60歳)は29%(同25%)、ベビーブーマー(61~79歳)は22%(同21%)となっており、若い世代ほど旅行のために借金を負う傾向が強い点は2024年と同様ながら、特にZ世代で最もシフトが顕著になっているもようだ。

今回の結果について、バンクレートのシニア業界アナリスト、テッド・ロスマン氏は「レイオフが増え、物価が高騰する可能性もあり、多くの人々が不安を感じている」とこのところの消費者マインドの低下に触れつつ、こうした懸念が、夏休みの旅行を様子見する旅行者が増えている要因だとの見方を示した(CNBC4月24日)。

シカゴ大学全国世論調査センター(NORC)が4月24日に公表した世論調査外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(注2)によると、米国民の約10人に6人が、ドナルド・トランプ大統領の経済全般への対応に不満を感じており、ほぼ同数が国際貿易への対応にも否定的であることが示された。このうち、52%は関税全般に反対し、トランプ氏の関税政策は行き過ぎと回答したのは半数以上(59%)となった。約3分の2が米国経済の状況が悪いと述べており、回答者の76%が関税政策の影響による消費財の価格上昇を懸念している。こうしたマインドがどの程度ハードデータに反映されるのか疑問視する向きもあるが(2025年3月21日記事参照)、裁量的消費に関しては徐々に人々の行動変容を伴いつつあるようだ。

(注1)2025年3月10~12日に、全米の成人2,238人を対象に実施された。

(注2)2025年4月17~21日に、全米の成人1,260人を対象に実施された。

(樫葉さくら)

(米国)

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