第1四半期の米新車販売は前年同期比4.0%増、関税発動前の駆け込み需要が押し上げとの見方
(米国)
ニューヨーク発
2025年04月10日
モーターインテリジェンスの発表(4月7日)によると、米国の2025年第1四半期(1~3月)の新車販売台数は、前年同期比4.0%増の392万6,422台となった(添付資料表1参照)。
今回の結果に関し、米国市場調査会社JDパワーのデータ・分析担当プレジデントのトーマス・キング氏は「関税は既に業界に影響を及ぼし始めている。関税による値上げの可能性を避けるために消費者が購入を加速させたことで、3月の販売が特に好調だった」(ブルームバーグ4月1日、注)と述べるなど、専門家らは、1962年通商拡大法232条に基づき2025年4月3日に発動した自動車関税(2025年4月3日記事参照)を前に、一部の消費者が購入を前倒しした可能性を指摘している。第1四半期後半の販売増は、在庫状況にも表れている。同四半期の販売台数に対する在庫台数の比率は210.0%と、前年同期を11.2ポイント上回ったものの、3月は前年同月比2.7%減少し、在庫日数も10%減少した(自動車オークション会社マンハイム調べ)。
第1四半期の販売台数を部門別にみると、乗用車が前年同期比 0.6%減の74万9,508台、小型トラックが5.1%増の317万6,914台となった。小型トラックのシェアは80.9%と2024年第4四半期(81.4%)に次いで過去2番目に高い水準となっている。特にトヨタ「タコマ」など、ピックアップトラックが14.7%増と好調だった。
主要メーカー別に伸び率の大きい順にみると、ゼネラルモーターズ(GM)がスポーツ用多目的車(SUV)「エクイノクス」などが押し上げて前年同期比17.0%増、現代自動車はSUV「ツーソン」が伸びて10.8%増、起亜は乗用車「K4」などが人気で10.7%増、マツダはSUV「CX-50」が好調で10.2%増と伸びた(添付資料表2参照)。一方で、ステランティスはピックアップトラック「ラム」などが押し下げて12.6%減、電気自動車(EV)メーカーのテスラは、バッテリー式EV(BEV)「モデルY」が33.8%減と大幅に落ち込んだことで8.6%減、フォードはSUV「エッジ」「エクスプローラー」が減少して1.3%減となった。
動力別にみると、BEV、プラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCV)を合わせたクリーンビークル(CV)は前年同期比8.0%増の37万8,676台で、全車に占める割合は0.4ポイント増加し9.6%となった(添付資料表3参照)。
自動車関税で米国内の大型車生産増の可能性
各自動車メーカーで追加関税への対応が検討されている中、コンサルティング会社KPMGの自動車業界チームを率いるレニー・ラロッカ氏は、自動車メーカーが今後、より大型で重量のあるSUVやピックアップトラックの生産に重点を置くだろう、との見方を示した。その理由として、「これらの車両の多くが米国内で組み立てられており、利益率が高い分、関税のコストを顧客に転嫁するのではなく、企業がそれを吸収する余地が大きくなる」ことを挙げた(「ニューヨーク・タイムズ」紙電子版4月8日)。
(注)月別の販売台数は、1月が前年同月比5.2%増、2月が0.9%減、3月が9.7%増だった。ただし、一部のメーカーは月次の販売台数を公表していないため、推定値。
(大原典子)
(米国)
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