米シカゴ連銀経済報告、関税政策による見通しの不透明感示す
(米国)
シカゴ発
2025年04月25日
米国連邦準備制度理事会(FRB)が4月23日に公表した地区連銀経済報告(ベージュブック、注1)で、米国中西部の一部地域(注2)を管轄するシカゴ連銀は2月後半から3月末にかけての同地域の経済活動について、全体的にほぼ変化がなかった(little changed)と報告した。関係者は今後1年間は経済活動のわずかな(slight)減少を予想している。
同地域の経済活動を分野ごとにみると、雇用はわずかに増加した。関係者は今後1年間も同様のペースで雇用増加が続くと見込んでいる。さまざまな業界にわたる複数の関係者は「十分な人員がいる」、または「人員補充のための採用のみを実施している」と回答しており、今後1年間で雇用を増やすと見込む関係者はごく少数となった。
個人消費は報告期間を通して控えめに(modestly)増加した。自動車を除く小売り売り上げは家電製品やコンピュータ、ほかの電子機器など、高額商品への支出が牽引して増加した。関係者は関税引き上げを想定した消費者の駆け込み消費に起因すると指摘した。自動車の販売は緩やかに増加した。これも、消費者が高関税を回避するため購入を前倒し、3月末にかけて販売ペースが加速したことによる。
企業支出はわずかに減少した。資本支出はわずかに減少し、2026年にかけての支出見通しは低下した。複数の関係者は経済見通しの不透明感から設備投資に慎重な姿勢を示した。小売り在庫は高水準からわずかに増加し、新車在庫はディーラーが関税引き上げに備えて在庫を増加させたため、高水準を維持した。
製造業の需要は横ばい(flat)となった。鉄鋼の受注はわずかに増加し、ある関係者はエネルギー部門の需要増加を報告した。加工金属の売り上げは、防衛産業からの注文増加を背景に、控えめに増加した。金属加工品の関係者の一部は、カナダからの輸入が大きな割合を占めるニッケルの価格急騰に懸念を示した。
2025年の地区内穀物生産農家の農業所得にはほぼ変化はなかったが、トランプ政権の関税などの貿易政策発表によって不確実性が高まった。関係者は輸出市場を失う可能性への懸念を示したが、一方で、一部の国が米国との貿易赤字を削減するために農産品購入を増やす可能性にも言及した。関係者は、トウモロコシの価格動向が比較的好調で、大豆の輸出依存度が高いとの認識から、大豆ではなくトウモロコシの作付面積がやや増加すると予想した。
個々の調査対象項目ごとの詳細は添付資料表を参照。
(注1)連邦公開市場委員会(FOMC)の開催に先立ち、年8回公表されており、銀行からの報告やビジネス関係者などの声を基にまとめたもの。
(注2)アイオワ州、イリノイ州北部、インディアナ州北部、ウィスコンシン州南部、ミシガン州南部。
(星野香織)
(米国)
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