インドネシア政府系投資ファンド「ダナンタラ」発足

(インドネシア)

ジャカルタ発

2025年03月03日

インドネシア政府は2月24日、新たな政府系投資ファンド「ダナンタラ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」(注)を発足させた。プラボウォ・スビアント大統領は同日にジャカルタの大統領宮殿で行った発足式典で、「ダナンタラは国有企業の配当金を成長産業に投資し、各国営企業が世界を牽引する存在へと変革するためのものだ」と述べた(大統領府プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。​

ダナンタラには、国営石油会社プルタミナや国営電力公社PLN、国営通信テルコム・インドネシア、国営鉱物資源会社マインド・アイディー(MIND ID)、国営銀行3行(マンディリ銀行、BRI、BNI)の7社が傘下に入る。最高経営責任者(CEO)はロサン・プルカサ・ルスラニ投資・下流化相、最高執行責任者(COO)は国営企業副大臣のドニー・オスカリア氏、監査役会会長はエリック・トヒル国営企業相が務める(「ジャカルタ・ポスト」2月24日)。

複数の現地紙が、ダナンタラはシンガポールの政府系投資会社「テマセク・ホールディングス」をモデルにしていると報じている。テマセクは1974年にシンガポール政府が設立した国営投資会社で、シンガポール航空やDBS銀行など主要企業の株式を保有し、国内外の幅広い産業に投資することで経済成長を支えてきた(「ビスニス」2月26日)。同様に、ダナンタラも国営企業の配当を原資に、国内産業の高度化を促進する狙いで、国営企業の配当金や資産を原資として、20以上の国家戦略プロジェクトへの投資を進める方針だ。初年度は200億ドル規模の投資を計画している(「ジャカルタ・ポスト」2月24日)。特にニッケル、ボーキサイト、銅といった鉱物資源の下流産業化、人工知能(AI)開発、石油精製施設、食料生産、再生可能エネルギーといった分野に焦点を当てている。

一方、ダナンタラの設立に対しては、懸念も示されている。インドネシアの経済金融開発研究所(INDEF)で研究者を務めるアンドリー・サトリオ・ヌグロホ氏は「ダナンタラの経営層が閣僚や政治家であることから、投資家の信頼を築く上で大きな障害に直面するだろう。ダナンタラの監督・運営機能は、特にCOOや監督役会のトップといった重要な役割が同じ省庁の出身者であることから、偏ったものになる危険性がある」と述べている(「ジャカルタ・ポスト」2月24日)。

(注)ダナンタラの正式名称は「ダヤ・アナガタ・ヌサンタラ」。公式HP外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、ダヤはエネルギー、アナガタは未来、ヌサンタラはインドネシアの統一国家を指し、ダナンタラはインドネシアの未来のエネルギーという意味を持つとされている。プラボウォ大統領が名付けたとされる。

(八木沼洋文)

(インドネシア)

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