ペルー輸出業協会に聞く輸出見通し、農産物の市場確保に重き

(ペルー、米国、中国、EU)

調査部米州課

2025年03月17日

ジェトロは、2025年へ向けてのペルーから他国への輸出動向について、ペルー輸出業協会(ADEX)にヒアリングを実施した(現地時間3月5日)。

課題は農産物の安定的な輸出先確保

ペルーの通商観光省が公表しているデータ上では、過去から輸出品目が「伝統産品」と「非伝統産品」の2種に分類されており(添付資料表1参照)、輸出先ごとに特徴が異なる(添付資料表2参照)。例えば、最大の輸出先である中国への輸出品目の大部分は、鉱物を中心とする「伝統産品」だ。一方で、2位の米国、3位のEUは農産物などの「非伝統産品」の輸出割合が高まることから、中国とは異なる意味で重要な市場だ。

米国のドナルド・トランプ政権による追加関税の賦課などの政策を考慮する上では、ブルーベリーやブドウといった主要農産物が対象となることをADEXとしては最も懸念している。農産物の米国向け輸出が困難になった際の代替市場として、まず想定されるのはEUだ。その意味で、EUがカカオやコーヒーを対象とする「森林破壊防止のためのデューディリジェンス義務化に関する規則」適用の延期(2024年12月5日記事参照)は朗報だった。ADEXの会員には輸出に取り組む中小企業も多く、同規則の簡素化・柔軟化についても期待したい。

日本については、貿易協定(注1)の存在がありながらも、「非伝統産品」の輸出が過去からなかなか伸びないという点が課題だが、炭化水素の輸出額は国別でトップとなっている(添付資料図参照)。

地政学リスク踏まえ、貿易協定交渉にも進展みられるか

ペルーは既に広い範囲で他国との貿易協定網を築いているが、昨今の国際情勢を踏まえ、今後はそのネットワーク拡大に向けた動きもあり得るだろう。2024年11月に香港との自由貿易協定(FTA)署名が行われたこと(2024年11月26日記事参照)は記憶に新しい。ほかにも、署名済みのグアテマラとの協定の批准や、貿易額が大きいインド(注2)との交渉、あるいは、エルサルバドル、インドネシア、ドミニカ共和国、モロッコ、アラブ首長国連邦(UAE)といった国々との交渉の進展が期待されるだろう。

なお、ジェトロは面談の中でADEXに対し、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)のPRを実施し、会員企業への広報協力を呼びかけた。

写真 ADEXマネジャーのディエゴ・セバスティアン・ジョサ・ベラスケス氏(左)に大阪・関西万博のPRを行うジェトロ・リマ事務所の石田達也所長(ジェトロ撮影)

ADEXマネジャーのディエゴ・セバスティアン・ジョサ・ベラスケス氏(左)に大阪・関西万博のPRを行うジェトロ・リマ事務所の石田達也所長(ジェトロ撮影)

(注1)2国間の経済連携協定(EPA)に加え、多国間協定として環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)が存在する。

(注2)ペルー通商観光省によると、2024年のペルーからインドへの輸出額は47億1,700万ドルで、国・地域別で4位。輸入額は10億8,000万ドルで、国・地域別で10位。

(佐藤竣平)

(ペルー、米国、中国、EU)

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