トランプ米大統領、教育省閉鎖の大統領令発令、実現可能性は不透明
(米国)
ニューヨーク発
2025年03月24日
米国のドナルド・トランプ大統領は3月20日、教育省の閉鎖に向けた措置を講じることなどを同省長官に指示する大統領令を発令した。
連邦制を採用する米国では、州政府が州内のさまざまな事項に関する法令の制定や執行権限を有している。教育に関しても、基本的には各州政府が州法などに基づいて、州内の教育行政制度を統括している。教育省は1979年10月に成立した「教育省設立法(Public Law 96-88)」に基づき、1980年5月に設立された連邦政府機関で、全米レベルでの教育の機会均等や水準確保に向けた補助金や奨学金プログラムを監督している。
ホワイトハウスが同日公表した同大統領令に関するファクトシートでは、同省設立以降、教育予算を拡充してきたにもかかわらず、学力は向上してこなかったなどとして、連邦政府主導の教育行政制度を非効率だと批判した。また「多様性、公平性、包摂性(DEI)」のイデオロギーを押し付けてきたなどと問題視した。今回の大統領令を通じて、トランプ氏は教育省のリンダ・マクマホン長官に対して、法律で規定された範囲内で同省の閉鎖を促進し、教育に関連する権限の州・地方自治体への返還に向けて、あらゆる必要な措置を講じることを指示した。
ただし、実際に教育省を閉鎖するには、連邦議会で同省閉鎖法案の審議・可決が必要となる。議会上院の教育・労働・保健・年金委員会のビル・キャシディ委員長(共和党、ルイジアナ州)は20日、「法案を可能な限り迅速に議会に提出し、大統領の目標達成を支援する」などとする声明を発表した。ただし、議会の与野党の議席数の差は拮抗(きっこう)していることに加え(2025年1月7日記事参照)、米国政治専門紙「ポリティコ」(3月19日)は、複数の共和党議員が同省閉鎖に懸念を示していることを踏まえて、「法案の可決は困難な道筋だ」と指摘している。
トランプ政権は発足以降、連邦政府機関や職員、予算の削減(2025年1月30日記事参照)や、DEI関連措置の廃止(2025年1月28日記事参照)などに積極的に取り組んでいる。
(葛西泰介)
(米国)
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