バタン・インドゥストロポリス経済特区(SEZ)開設、インドネシアの「深セン」目指す

(インドネシア)

ジャカルタ発

2025年03月24日

インドネシア政府は3月20日、中部ジャワ州バタン県に整備した「バタン・インドゥストロポリス経済特区(SEZ)」の開設式を行った。既存のバタン工業団地(Grand Batang City)を経済特区として認定した。同SEZは、鉱物資源の下流化(注1)を後押しする役割が期待されている。製造業や物流、観光など複数の産業クラスターを包含するインドネシア最大級の経済特区となる(3月20日付内閣官房プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

政府は今後5年間で計75兆ルピア(約6,750億円、1ルピア=約0.009円)の新規投資と5万人の雇用創出を目標に掲げており、同SEZをインドネシア産業高度化の重要プロジェクトとして位置付けている。現地報道によると、2024年11月に北京で行われたプラボウォ・スビアント大統領と中国の習近平国家主席との会談(2024年11月15日記事参照)でも取り上げられた「2国間ツインパーク(TCTP)」構想(注2)に基づき、中国からインドネシアへの投資を促進しようとする動きもある。今後は海運や食品製造、建材、電子機器などの分野で、約16兆ルピアの投資が計画されているもようだ(「アンタラ」3月18日)。なお、同SEZには2025年3月時点で既に27社の進出が決まり、このうち7社が稼働、7社が建設中、残り13社も準備段階と報道されている(「アンタラ」3月20日)。

プラボウォ大統領は開所式で同SEZを「インドネシア版の『深セン』」と称し、近隣国に追いつくため大胆な産業開発が必要だと強調した。また「こうした現代的な工業団地を開発し、大規模投資を呼び込む取り組みは、競争力強化を図る国家ビジョンに沿ったものだ」と述べた。政府は経済特区制度を国策とし、産業高度化と地域振興を推進している。

アイルランガ・ハルタルト経済担当調整相によると、現在稼働中のSEZは全国で24カ所に上り、累計投資額は約263兆ルピア、創出雇用は16万人以上に達する。政府は今後さらにSEZを拡充し、製造業や観光など重点分野への投資誘致を強化する方針だ(「アンタラ」3月20日)。

(注1)サプライチェーンの川下を含めた高付加価値化のことで、政府は下流化(hilirisasi)という単語を多く用いる。鉱業の高付加価値化を目指し、ニッケルの未加工鉱物状態での輸出を2020年1月から禁止しているほか、ボーキサイト鉱石の輸出も2023年6月から禁止している。

(注2)2国間ツインパーク(TCTP)構想は、インドネシアと中国間の貿易と投資を急速に促進することを目的とした国家的優先プロジェクトの1つ。両国に総合産業パークを設立し、戦略的パートナーシップを深め、中国の「一帯一路」構想とインドネシアの「グローバルな海洋軸(GMA)」構想の連携を深めることを目指している(在中国インドネシア大使館プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

(八木沼洋文)

(インドネシア)

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