チン首相が日系企業との対話会を開催、投資環境の課題解決に向け議論

(ベトナム)

ハノイ発

2025年03月13日

ベトナム政府は3月1日、日系企業との対話会をハノイ市内の首相府で開催した。ファム・ミン・チン首相、ホー・ドゥク・フォック副首相、グエン・チー・ズン副首相(前計画投資相)、伊藤直樹駐ベトナム大使をはじめ、ジェトロ、国際協力機構(JICA)、国際協力銀行(JBIC)、ベトナム日本商工会議所(JCCI)、ホーチミン日本商工会議所(JCCH)、30社以上の日系企業や両国官民関係者が参加した。チン首相が対話会の議長を務め、「未来に向けた投資」と「新世代ODAの実施に向けて」の2部構成で、投資環境とODAにおける課題の解決に向けた活発な議論が行われた。

投資環境のセッションでは、ジェトロ・ハノイ事務所の小篠春彦所長が、2024年度海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)を基に、在ベトナム日系企業の好調な業績や高い事業拡大意欲、米中対立などを背景とした日系企業によるベトナムへの生産移管の状況などを説明(ベトナムの調査結果のサマリーは、2025年3月7日付地域・分析レポート参照)。「行政手続きの煩雑さや不透明な法制度などの課題を改善することで、日系企業のベトナム投資環境に対する満足度が高まり、新たな投資につながる」と述べた。

また、JCCIの武藤司郎会頭とJCCHの埜﨑孝雄会頭が、直近の大型案件などの紹介を含めて日系企業の前向きな投資意欲を示すとともに、中央省庁の新体制(2025年2月25日記事参照)への円滑な移行や、データ移転・個人情報関連の法令における不透明な点の解消などを要望した。

チン首相は最後の総括で、ベトナムが2025年のGDP成長率8%、2026~2030年の2桁成長を目指すにあたり、日本企業のベトナムでの投資やビジネスの推進に期待を寄せた。また、行政全体の効率化を図りつつ、日系企業が課題とする個別事案について対処する考えを示した。具体的には、生産設備の経年使用基準が妨げとなって投資ライセンスの更新に支障が出ている問題(2024年11月12日記事参照)について、3月までに関係政令の見直しの道筋をつけるよう、財政省に指示した。ホーチミン市都市鉄道1号線などの円借款事業における工事費の未払い問題についても、4月末を期限として解決するよう、責任者を任命し、関係省庁に指示した。

なお、ベトナム政府は、日系企業との対話会の前後の日程で、米国、中国、韓国、欧州およびASEANの在ベトナム企業とも同様の対話会を実施している。

(萩原遼太朗)

(ベトナム)

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