米アイオワ州選出の上院議員、カナダへの追加関税対象から肥料原料の除外を嘆願

(米国、カナダ)

シカゴ発

2025年02月06日

米国アイオワ州選出のチャック・グラスリー上院議員(共和党、注1)は2月3日、SNSの投稿(注2)で、ドナルド・トランプ大統領に対し、肥料の重要な3要素の1つのカリウムについて、カナダへの25%の追加関税の対象から除外することを嘆願した。同議員は投稿で「ジョー・バイデン前大統領のインフレ政策により、農業の投入コストが20%上昇し、特に肥料の価格が高騰している。そのため、私はトランプ大統領に、カリウムを関税の対象外とするよう訴える。なぜなら、家族経営の農家はカリウムのほとんどをカナダから輸入しているからだ」と述べた。

グラスリー氏は以前から高関税の賦課には否定的な立場を取っている。同氏は、トランプ氏の1期目の選挙戦でトランプ氏を共和党候補者として支持しつつも、関税賦課の公約については、1930年のスムート・ホーリー法を引き合いに出し、「そのような動きは壊滅的な結果を招く可能性がある」と懸念を表明していた(「ニューヨーク・タイムズ」電子版2016年2月1日)。

イリノイ州立大学とオハイオ州立大学の2月4日の発表によると、米国ではカリウムの生産はほとんど行われておらず、2020年以降は国内消費量の90%を輸入が占めている。さらに、輸入量のうちの80%以上をカナダからの輸入に依存していて、追加関税の賦課による影響が大きくなるとみられている。グラスリー氏を選出したアイオワ州は農業の盛んな中西部に位置し、カリウムが肥料として用いられるトウモロコシ、そのトウモロコシを飼料として用いる豚や卵の生産が全米で1位の州だ。

全米最大の農業生産者団体AFBF(American Farm Bureau Federation)も、追加関税の賦課による農家への潜在的な打撃に懸念を表明している。同協会のジッピー・デュバル会長は2月2日、「米国の関税賦課と相手国による報復措置は、農家の生活にさらなるストレスを与えるだろう。米国の農業収入の20%以上は輸出によるもので、主にカナダ、メキシコ、中国という3つの市場に依存している」と述べている。

(注1)グラスリー上院議員は現在、上院仮議長(President Pro Tempore)で、大統領職の継承順位第3位。20世紀半ば以降は多数党の最年長議員が仮議長を務めるという慣例がある。

(注2)グラスリー氏の投稿は、トランプ氏がSNS投稿を通じて、メキシコとカナダに対する25%の追加関税の適用を1カ月間、一時停止すると発表する前に投稿された(2025年2月5日記事参照)。

(星野香織)

(米国、カナダ)

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