EUのAI規則、禁止されるAI利用のルールが適用開始に
(EU)
調査部欧州課
2025年02月13日
EU理事会(閣僚理事会)により2024年5月に採択され(2024年5月27日記事参照)、同年8月に発効した人工知能(AI)を包括的に規制する規則の一部の規定の適用が2025年2月2日から先行して開始された。
適用開始したのは同規則の第1~5条で、これには、AIシステムの定義、AIリテラシーのほか、EUにおいて容認できないリスクをもたらすAIのユースケースが含まれる。
欧州委員会は2月4日から6日にかけて、次のガイドラインを発表した。
〇AIシステムの定義:AIの技術革新を促進するため、ソフトウエアシステムがAIシステムを構成するかどうかを業界が判断できるようにすることを目的とする。
〇AIシステムのプロバイダーや導入者から収集したAIリテラシー実践事例集:AI技術を効果的に利用するために必要なスキルと理解を身につけることを確保しつつ、利用者間の学習と交流を促進する。
〇禁止されるAIシステム:AI法の順守を確保するため、国民の安全や基本的権利に容認できないリスクをもたらすAI利用(次の1.~8.)の禁止に関するガイドライン。
- サブリミナル操作:人々の意思決定を無意識のうちに操作するもの
- 脆弱(ぜいじゃく)層への悪用:年齢、障害、社会経済的地位などを悪用して人々を操作するもの
- 社会的信用スコアリング:個人の行動や特性に基づいて信用度を評価し、そのスコアが不利益または不利な扱いにつながるもの
- 犯罪リスク評価と予測:プロファイリングまたは性格特性や特徴のみに基づいて、犯罪をする人々のリスクを評価または予測するもの
- 顔認識データベースの作成:インターネットまたは監視・防犯用のカメラなどの映像から顔認識データベースを開発するためのもの
- 感情認識:職場や教育機関において人の感情を推測するためのもの
- バイオメトリクスによる分類:人種、政治的意見、労働組合への加入、宗教または哲学的信条、性的指向を推測・推論するために、バイオメトリクスデータに基づいて人々を分類するもの
- リアルタイムでの遠隔生体認証:法執行目的で公共の場でリアルタイムに生体データを収集するもの
これらのガイドラインは、法律上の概念を説明し、関係者の意見に基づいて、実用的な使用例を提供する。ガイドラインには拘束力はなく、必要に応じて更新される。また欧州委員会は、新興企業や中小企業を支援する「AIイノベーション・パッケージ」から、新興企業、産業界、研究者がAIモデルやシステムを開発するために必要とする大規模な計算能力へのアクセスを提供する「AIファクトリー」まで、AIのイノベーションを促進するためのイニシアチブを打ち出している。
(坂本裕司)
(EU)
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