ルーラ大統領、BRICSでの貿易決済の多様化の必要性に言及

(ブラジル、BRICS)

調査部米州課

2025年02月28日

ブラジルの首都ブラジリアで2月24~25日、BRICSのシェルパ会合が開催された(注1)。BRICS加盟国とパートナー国のうちの11カ国代表が出席し、7月6~7日に同国リオデジャネイロ市で開催予定のBRICS首脳会合に向けて協議した(注2)。

シェルパ会合に出席したブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領は貿易決済の多様化についても触れ、保護主義的な貿易が拡大する現状下、「支払いの選択肢を増やすことは、脆弱(ぜいじゃく)性とコストを削減することを意味する」とし、「補完的で透明性の高い安全な決済プラットフォームの開発に取り組んでいる」と強調して、BRICS内の貿易決済の多様化の必要性に言及した(2月26日付政府系メディア「アジェンシア・ブラジル」)。

2025年のBRICS議長国ブラジルのマウロ・ビエイラ外相は同会合で、現在の世界情勢下の多国間協調の重要性を強調し、「ブラジルのリーダーシップの下、新興国の役割強化を推進することを目指す」と述べた。ビエイラ外相はまた、脱グローバル化を批判し、開放的で公正な多国間貿易システムを援護した上で、「経済秩序を促進する多国間貿易システムを提唱する必要がある」とも述べた(2月25日付「アジェンシア・ブラジル」)。

ブラジルはBRICS議長国として「グローバルヘルスへの協力、貿易・投資・金融、気候変動対策、AI(人工知能)ガバナンス、多国間平和と安全保障システムの改革、BRICSの制度発展」の6分野について優先的に取り組むとしている。

BRICSでの貿易決済の多様化については、2024年10月にロシアのカザンで開催されたBRICS首脳会合で、ロシアと貿易相手国との間で貿易決済に支障が生じていることから(2024年5月30日記事参照)、国際銀行間通信協会(SWIFT)に代わる国際決済機関の創設に関する議論があったが、議論は深まっておらず、具体的な結論も出ていない(2024年11月5日記事参照)。BRICS域内での貿易決済については、7月に開催される首脳会合でも引き続き議論の対象になるとみられる。ただ、米国のドナルド・トランプ大統領は就任前の2024年11月にSNSトゥルースソーシャルへの投稿で、BRICS諸国が共通通貨を創設した場合や、ドルの代替通貨を支援した場合、各国から米国への輸入に対して100%の関税を課す意向を示していた(2024年12月3日記事参照)。

(注1)シェルパ会合は、各国の外交代表による会合。

(注2)BRICSは、2024年10月にロシアのカザンで開催された第16回首脳会合で、準加盟国に相当する「パートナー国」の制度創設を決定した。現在の加盟国は、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ共和国、アラブ首長国連邦(UAE)、イラン、エチオピア、エジプト、インドネシアの10カ国。

(辻本希世)

(ブラジル、BRICS)

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