メトロ1号線などウランバートル市インフラプロジェクトリスト発表
(モンゴル)
北京発
2025年02月20日
モンゴル政府は1月22日の定例閣議で、首都ウランバートル市の大気汚染対策や交通渋滞緩和策など、生活水準の向上を目的とした各プロジェクトを推進していくことを決定した。政府は2025年を「首都インフラ開発支援の年」と宣言した上で、関連プロジェクトを効果の高い順に並べたリストを作成し、リストに従って実施計画を定めるよう、ラブジフ・エルデネブレン国務相(20分都市担当、注1)、ヒシゲー・ニャムバータル・ウランバートル市長らに指示するとともに、他の閣僚にも関連する支援を行うよう指示した。また、プロジェクトの実現可能性調査(FS)や設計図、予算見通しの作成に早急に取り組むよう関係者に指示した。
これらのプロジェクトは政府が定める「ウランバートル市開発マスタープラン2040」「国家開発基本方針『ビジョン2050』」(注2)、「新復興戦略」(注3)、「2024~2028年政府行動計画」(注4)に記載された14の国家メガプロジェクト(注5)と連携させるとしている。
プロジェクトリストでは1.渋滞対策、2.大気汚染対策、3.その他のインフラ関連事業の3つの分野ごとに影響度に応じて優先順位を定めている(各分野のプロジェクトとその進捗状況については添付資料表参照)。
渋滞対策では、ウランバートルメトロ1号線の建設が筆頭に挙がった。同メトロはウランバートル市西部のトルゴイトから東部のアムガランまでの区間内に15カ所の駅を建設する計画で、2030年8月の運行開始を予定している。政府の発表では、韓国企業を中心とする共同企業体(ジョイント・ベンチャー、JV、注6)とパートナーシップ契約を結び、日本工営が技術コンサルティングを提供するとされている。
また、渋滞対策の2番目には、ライトレール(LRT)の建設を盛り込んだ。ウランバートル市北部のゾンジンショッピングセンターから市中心部のスフバートル広場をつなぐ南北線の実現可能性調査(FS)を2025年第1四半期(1~3月)中に完了させる計画で、2027年の開通を予定する。渋滞対策としてはそのほかに、ウランバートル市東部のバヤンズルフバスターミナルからトーラ川沿いにウランバートル市西部の環状交差点に至る33キロ区間における6車線(片側3車線)の高速道路建設のほか、BRT(バス・ラピッド・トランジット、注7)やロープウエーの敷設を挙げた。
このほか、大気汚染対策では、第5火力発電所(注8)の建設のほか、住宅開発やごみ焼却場の建設を挙げた。生活環境改善としては、新遊園地や公園の建設などのプロジェクトを掲げた。
(注1)住民が各自の居住地域から20分以内に行政サービスを受けることができるよう、自治体を再編し、各自治体の中心にアクセスするための公共交通機関や道路を整備する構想。
(注2)モンゴルの2050年までの長期発展計画。
(注3)モンゴルの新型コロナウイルスの影響からの経済再建を目指す政策。
(注4)2024年6月の国会議員選挙を受けて発足したオヨーンエルデネ連立政権(2024年7月25日記事参照)で、連立内の各政党の公約を盛り込んで作成した計画。14のメガプロジェクトのほか、新復興戦略2.0、20分都市圏構想などを盛り込んでいる。
(注5)次の14のプロジェクトを指す。
- 中国・モンゴル間の越境貨物鉄道(ガシューンスハイト~ガンツモド間、ハンギ~マンダル間、シベーフレン~セヘ間、2022年9月5日記事参照)
- タワントルゴイ火力発電所(2022年11月10日記事参照)
- エルデネブレン水力発電所(中国からの借款で建設、2023年7月6日記事参照)
- エグ川水力発電所(ロシアとの協力案件、2024年9月12日記事参照)
- 再生可能エネルギー・分散型電源開発
- 南部地方水供給用水路プロジェクト
- エレーンツァブ~チョイバルサン~ビチグト間縦断鉄道
- モンゴルとフランスのウラン共同開発プロジェクト(フランスのオラノとモンゴル政府は1月17日、Zuuvch Ovooウラン鉱山の開発・生産についての投資協定を締結)
- 石炭化学・コークス化学コンビナート
- 銅精錬所プロジェクト
- 製鉄所プロジェクト
- 製油所プロジェクト(インドの支援により建設、2027年稼働予定)
- 金精錬所プロジェクト
- 国産人工衛星プロジェクト
(注6)モンゴル政府の発表によると、韓国の総合エンジニアリング企業ドファエンジニアリング(DOHWA ENGINEERING)をはじめ、国家鉄道公団、韓国鉄道公社などの企業がメンバーとなっている。
(注7)連節バス、PTPS(公共車両優先システム)、バス専用道、バスレーンなどを組み合わせることで、速達性と定時性の確保や輸送能力の増大が可能となる高次の機能を備えたバスシステム。
(注8)大気汚染の主な原因となっているゲル地区の豆炭ストーブを廃止し、アパート化してセントラルヒーティングを敷設するためには、熱源となる火力発電所を新たに建設する必要がある。
(藤井一範)
(モンゴル)
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