AIアクションサミット、安全で持続可能なAI普及に向けた行動宣言採択

(フランス)

パリ発

2025年02月14日

パリで2月6日から開かれていた「人工知能(AI)アクションサミット」が11日、信頼できる持続可能なAI技術を全ての人が利用できるようにするための100以上の具体的な取り組みとコミットメントを発表し、閉幕した。サミットを締めくくる首脳会議では、AIに関する主要な共同行動について議論が行われ、「人と地球のための持続可能で包括的なAIに関する宣言外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」が採択された。

同宣言では、AIへのアクセスを促進し、AI技術を包括的で透明性があり、安全で信頼できるものにすることや、人と地球のために持続可能なAIを実現すること、国際協力を強化し、AIガバナンスを調整することなどを優先課題として取り上げ、公益のためのAIプラットフォームとインキュベーターの立ち上げなどを通じ、信頼できるAIエコシステムを共同で構築することを決めた。

今回のサミットで初めて、マルチステークホルダー形式でAIとエネルギーに関する議論が行われた。持続可能なAIシステム(ハードウエア、インフラ、モデル)への投資促進や、AIと環境に関する国際的な議論の奨励、国際エネルギー機関(IEA)の枠内でAIのエネルギーへの影響に関する研究所を設立することなどで合意した。

AIが労働市場に与える影響については、共通の理解を深める必要があるとし、労働、教育、訓練への影響を考察するためのネットワークを構築することを決定した。また、生産性、能力開発、労働条件、社会対話の向上を目指してAIを活用することで一致した。

AIのガバナンスに関しては、安全性や持続可能性、国際法の順守、人権擁護、男女平等、消費者保護、知的財産権保護などの観点から世界的に見直す必要があることを認め、国連総会の第79回会議で採択されたデジタル協力とAIガバナンスに関する包括的な枠組み「グローバル・デジタル・コンパクト」の実現に向け、AIガバナンスに関する世界的な対話を開始し、独立した国際的なAI科学パネルを設立する方針を再確認した。

同宣言に開催国フランスをはじめ、EU、中国、インド、日本を含む63カ国・地域が署名したが、米国と英国は署名しなかった。サミットに参加した米国のJ.D.バンス副大統領は11日の基調講演で「われわれはAI分野の過剰な規制が、立ち上がったばかりの変革的な産業を殺してしまう可能性があると考えている。AI政策の発展を推進するためにあらゆる努力を惜しまないが、規制緩和の傾向が対話の中に浸透していくのを願っている」と発言し、規制強化の動きを警戒した。

(山崎あき)

(フランス)

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