カタルーニャ州で水素ミッション実施、地産地消やパイプライン輸出で有望
(スペイン)
マドリード発
2025年01月27日
ジェトロは1月15~17日、スペイン・カタルーニャ州政府貿易投資促進局(ACCIÓ)、在スペイン日本大使館、在バルセロナ日本総領事館の協力の下、カタルーニャ州グリーン水素ミッションを実施した。日本企業からは製造業、エネルギー、金融関連、商社など14社・団体22人が参加。同州内外で水素製造・利活用ビジネスに関わる産官学エコシステムとの交流や、水素関連企業、主要港湾の視察を行った。
同州は、自動車や石油化学などスペイン最大の産業規模を背景に、産業、港湾やモビリティの脱炭素化を通じた地産地消型の取り組みが活発だ。フランスを経由した需要地ドイツへのグリーン水素供給を目指すパイプライン計画「H2MED」の輸出拠点でもあり、中長期的にe-メタノール(注)などの派生製品を製造・輸出する水素ハブの役割も期待される(2023年7月20日地域・分析レポート参照)。
初日は、マドリードで大使館主催のセミナーが開かれた。中央政府機関やH2MED計画を主導する送ガス系統運用者(TSO)のエナガスによるスペインの最新水素事情のレクチャーに加え、スペインの主導的な水素関連企業との交流が行われた。また、総領事館主催のネットワーキングイベントも開催され、活発な意見交換の場となった。
2日目には、バルセロナでACCIÓのセミナーが開催され、同州の水素政策やエネルギークラスターが紹介された。州企業・労働庁のジャウマ・バロー次官が「エネルギー移行段階においては、グリーン、ブルーなど水素の色にこだわらず、競争力維持と両立できる橋渡し技術を最大限に活用するのがわれわれのスタンスだ」と述べた。現地企業のピッチでは、液化水素ビジネスへの移行に取り組む燃料貯蔵・輸送用タンクメーカーのインドックス・エナジー・システムズ、メタノール改質によるオンサイト水素製造ソリューションをモビリティ向けに提供するメタノール・リフォーマー
、バルセロナからスペイン北部への水素燃料電池トラックと補給網のネットワーク構築拡大を目指す企業連合のHydrogenizingBCN
などの地場企業が事業概要を紹介。エンジニアリング大手のセネル
は、欧州で参画する浮体式液化天然ガス(LNG)受け入れ基地や複合サイクル発電所の建設案件では水素対応が求められることや、アンモニア・クラッキング技術開発への注力について述べ、日本の技術への関心を示した。
(左)B2Bセッション(個別面談)の様子、(右)メッサー視察の様子(ともにジェトロ撮影)
視察プログラムでは、欧州イノベーション会議(EIC)(注2)の有望ディープテック・スケールアップに選ばれた活性電極ソリューション企業のジョルト・テクノロジーズ
を訪問。また、水素消費の要となるバルセロナ港とタラゴナ港で脱炭素化への取り組みや日本企業の参入可能性について聞いたほか、南欧最大規模のタラゴナ石油化学工業地域に立地するドイツ産業ガス大手メッサーのスペイン拠点を訪れ、二酸化炭素(CO2)回収サービスや、豊田通商と欧州でグリーン水素の製造・供給と燃料電池車両フリートをパッケージ化して提供する合弁事業のシンフォニー(SympH2ony)
が紹介された。
参加日本企業からは、「多数の企業・政府関係者と効率的に会い、水素をめぐる生の声が聞けた」「水素サプライチェーンには港が関係するため、その港の動きを知ることができる良い機会となった」「個別面談では他社に聞かれたくない質問もできた」などの声があった。
(注1)再生可能エネルギー由来の水素(H2)と二酸化炭素(CO2)を原料として合成された液体燃料。
(注2)ディープテックのスケールアップ支援に特化したEUのイノベーション支援機関。
(伊藤裕規子、宮下葉月)
(スペイン)
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