米国・カナダ国内へのサプライチェーン集約が加速、ジェトロ2024年度海外進出日系企業実態調査(北米編)

(米国、カナダ、日本)

調査部米州課

2024年12月02日

ジェトロは12月2日、北米に進出する日系企業を対象とした現地での活動実態に関するアンケート調査「2024年度 海外進出日系企業実態調査(北米編)」の結果を発表した(注)。

2024年に黒字を見込む企業は、在米国日系企業で66.2%、在カナダ日系企業で73.8%となり、米国はわずかながら新型コロナ禍前の2019年の水準(66.1%)を初めて超えた。今後1~2年の事業展開の方向性は、現地市場ニーズの拡大を見込み、「拡大」を予定する企業の割合が米国(48.6%)、カナダ(53.8%)ともに5割前後とここ数年の傾向を維持した。拡大する機能のトップが「販売」だった点も、ここ数年と同じだった。米国ではカリフォルニア州、テキサス州のほか中西部や南東部の州など、事業拡大を見込む地域に広がりがみられた。

進出先での競争環境は、在米国・カナダ日系企業ともに、5年前と比べた競合相手の数について約3割が増加と回答した。そうした中、米国では36.2%、カナダでは48.1%の企業が主力製品・サービスの市場シェアを増加させた。厳しさが増す競争環境でも、日系企業の一定数はシェアを着実に伸ばしていることが分かった。

経営課題では両国とも、「従業員の賃金水準の上昇」が2022年度調査から3年連続でトップとなった(米国53.2%、カナダ44.2%)。課題への対策でも、「既存社員の賃金の引き上げ」が筆頭で(米国40.1%、カナダ35.8%)、インフレによる人件費の高騰が在北米日系企業の悩みの種となっている実態が浮き彫りとなった。

調達先を拠点国内に移す動きが続く

サプライチェーンに関する問いでは、特に在米国日系企業において、調達先を米国内に変更する動きが目立った。米国内での調達が全体に占める割合は48.5%と、前年の46.3%から2.2ポイント上昇した。調達先の変更の件数でみても、全141件のうち米国へ変更したのが46件と、25件で2位のASEANを大きく引き離した。ASEANに変更した25件のうち17件は中国からの変更となっており、前年からの傾向が続いた。在カナダ企業でも調達先の変更件数全体の3分の2(6件)がカナダへの変更だった。

上記を含め、本調査では、(1)営業利益見通し、(2)経営上の課題と対応策、(3)競争環境の変化、(4)賃金実態、(5)サプライチェーン(調達・生産)の見直し、(6)事業展開の方向性、(7)米国連邦政府の政策影響(米国のみ)を紹介している。詳細は冒頭リンク先を参照。

(注)本調査は、海外に進出する日系企業活動の実態を把握し、日本企業・政策担当者向けに幅広く提供することを目的に、原則年1回、オンラインによるアンケート形式で実施しているもの。調査実施期間は2024年9月3~24日。調査対象は北米進出日系企業(製造業・非製造業)のうち、直接出資および間接出資を含めて、日本の親会社の出資比率が10%以上の企業および日本企業の支店。有効回答数は774社/1,826社(有効回答率42.4%)。今回調査が米国では1981年以降43回目、カナダでは1989年以降35回目。過去調査結果はこちらから。

(磯部真一)

(米国、カナダ、日本)

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