汚職対策がカギ、ウクライナビジネス展開を探るシンポジウム、ジェトロなどが開催
(ウクライナ、日本)
調査部欧州課
2024年11月11日
国連開発計画(UNDP)とジェトロ、法務省は11月7日、「ウクライナでの日本企業のビジネス展開を探る-機会と課題-」と題した公開シンポジウムを開催した。このイベントは、G7が設置した「ウクライナ汚職対策タスクフォース」の第3回会合のサイドイベントとして行われた。
最初に、クリストフォロス・ポリティスUNDPウクライナ事務所常駐副代表がウクライナ政府やUNDPのビジネス環境改善の取り組みを説明した。許認可の発行や税関、公共調達などで汚職リスクが認識されているが、汚職対策や透明性の高いビジネスエコシステムの構築・強化が経済復興の柱として取り組まれていると指摘した。
パネルディスカッションでは、日本企業のウクライナビジネスの可能性について議論された。
松田邦紀・前駐ウクライナ日本大使は日本企業に期待される分野として、自動車やバッテリーなどの製造業、ウクライナの得意とするIT分野での協業、鉄道など運輸分野の技術支援などを例に挙げ、日本企業の積極的な関与に期待を示した。
田中克ウクライナ財務相アドバイザーは、ウクライナのITを活用した堅固な金融システムや財政、汚職といった問題への着実な対処を説明し、リスク対策を講じれば、日本企業の進出に違和感はないとコメントした。
デロイト・ポーランド(ウクライナジャパンデスク代表)の高橋渉氏は、ウクライナ西部を中心に活発な経済活動や投資が行われていると説明し、進出時には、市場に精通した信用できるパートナーの選定が不可欠と述べた。
ウクライナビジネスオンブズマンカウンシル(BOC、注)副代表のテチアナ・コロトカ氏は、持続可能なインフラの構築などで日本の知見や技術が求められていると呼びかけた。水・エネルギー効率を高めるIT技術などを例に挙げた。
質疑応答では、ウクライナビジネスの紛争を効率よく、公正に解決する仕組みについて質問が寄せられた。法務省の参加者は、ウクライナ投資の際には紛争仲裁方法として国際仲裁の利用を検討してほしいと提案した。
また、現地パートナーの選定に関し、コンプライアンスの確認方法の質問に対して、デロイトの高橋氏は、現地のコンサル企業などを利用して、企業の信用情報や特定の軍事・政府機関とのつながり、経営陣の逮捕歴などの確認といった多方面からデューディリジェンスを行うことが可能と回答した。
(注)国に対し、合法的なビジネスの権利を代弁する独立組織。国家機関の不正行為に関するビジネス界の苦情を検討し、裁判前の段階で紛争の解決を支援する。
(柴田紗英)
(ウクライナ、日本)
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