BRICS首脳会議、SWIFT代替機構の創設には踏み込まず

(ロシア、アラブ首長国連邦、インド、イラン、エジプト、エチオピア、中国、ブラジル、南アフリカ共和国)

調査部欧州課

2024年11月05日

ロシア中部のカザンで10月22日~24日、ロシアが議長国となって、BRICS首脳会議が開催された(2024年10月31日記事参照)。加盟9カ国を含む合計36カ国、6国際機関の代表団が参加した。加盟が取りざたされていたサウジアラビアは、代表団が一部の会議に参加はしたものの、現時点では加盟には至っていないもようだ(2024年1月19日記事参照)。

一連の会議では、限定された人数での少人数会合、経済関係者などを交えた拡大会合、個別首脳会合が行われたほか、全参加国による会合として「アウトリーチ/BRICSプラス会合」も開催された。首脳会議では、主としてa.政治・安全保障、b.貿易・投資、c.文化・人文の3つの方向性で議論が行われた。

貿易・投資について、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は拡大会合で、世界経済の重心は新興国・途上国に移りつつあると指摘し、BRICS諸国を中心にグローバルサウス諸国で新たな成長を生む多極的な経済圏が形成されつつあるとの認識を示した。その一方で、「債務問題、特定国への一方的な制裁措置、保護主義などが分断を生み、途上国の貿易と投資の発展を阻害している」と、西側諸国を念頭に現状を批判した。

プーチン大統領は、好調なBRICS諸国の経済を背景に、加盟国の経済ポテンシャル拡大のため、またグローバルサウス諸国向けの投融資強化のため、BRICSによる新たな投資プラットフォームの創設を提案した。さらに、国際経済の枠組みの中でより公平なルール作りと国際金融システム作りに向け、BRICS諸国によるWTOに関する協議の場を作る考えを示した。

一方で、ロシアと貿易相手国との間で貿易決済に支障が生じていること(2024年5月30日記事参照)など、ロシアを取り巻く国際金融環境に関しては、首脳会議前に話題に上っていた国際銀行間通信協会(SWIFT)に代わる国際決済機関の創設に関する議論については、特に言及がなかった。プーチン大統領は首脳会議を総括する記者会見で、貿易決済は重要な問題との認識を示しつつ、代替機関の創設は考えていないと述べ、当面はロシアを含む各国の金融情報システムを通じた各国通貨の決済を志向する考えを示した。

(欧州課)

(ロシア、アラブ首長国連邦、インド、イラン、エジプト、エチオピア、中国、ブラジル、南アフリカ共和国)

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