イスラエル国会、UNRWAの国内活動・接触禁止法案を可決
(イスラエル、パレスチナ、日本、カナダ、オーストラリア、フランス、ドイツ、韓国、英国、米国、世界)
テルアビブ発
2024年10月30日
イスラエルの国会に相当するクネセトは10月28日、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の活動を大幅に制限する2つの法案を審議し、両法案は可決された。1つ目の法案は、UNRWAがイスラエル国内で直接的、間接的を問わず、サービスの提供や活動の実施を禁止するもので、この法律の施行により、UNRWAの東エルサレムやヨルダン川西岸での活動ができなくなる。本法案の説明文書には、「UNRWAとその職員がイスラエルに対するテロ活動に参加し、関与していることがイスラエル国家に証明されたため(2024年1月29日記事参照)、イスラエルは自国領土内でのUNRWAの活動を全て停止するよう努めることを決定することを提案する」と記載されている。採決では、賛成92票、反対10票だった。
2つ目の法案は、イスラエル国内におけるUNRWAの特権や免除を取り消し、イスラエル政府当局者がUNRWA職員と接触してはならないと規定している。採決では、賛成87票、反対9票だった。
両法案の可決を受けて、イスラエル首相府はX(旧Twitter)での投稿で、「イスラエルに対するテロ活動に関与したUNRWA職員は、責任を問われなければならない」としながらも、「人道危機を回避することも不可欠であるため、ガザでは現在も将来も持続的な人道支援が可能でなければならない」と指摘し、「イスラエルの安全保障を脅かさないかたちでイスラエルがガザの市民への人道支援を継続できるよう、国際的なパートナーと協力する用意がある」と述べた。
日本やカナダ、オーストラリア、フランス、ドイツ、韓国、英国の外相は27日、「UNRWAの活動がなければ、ガザ地区およびヨルダン川西岸地区における支援およびサービスの提供は著しく妨げられる」として深刻な懸念を表明していた。日本の外務省は29日、「UNRWAやその他の国際機関による人道支援活動が可能な環境が持続的に確保されることが極めて重要であり、わが国は、イスラエル政府に対し、そのような環境が持続的に確保されることを強く求める」との岩屋毅外相の談話を発表した。
国連のアントニオ・グテーレス事務総長は28日に声明を発表し、「法律の施行はパレスチナ難民に壊滅的な結果をもたらす可能性があり、容認できない」と述べ、国連憲章上の義務や国際法上の義務に一貫した行動をとるよう求めた。米国務省のマシュー・ミラー報道官は29日の記者会見で、「この法案への反対を明確にしてきた。今後数日間、イスラエル政府がどのように計画しているのかについて、イスラエル政府と関わっていくつもりだ」と述べた。
イスラエルとハマスの衝突の詳細についてはジェトロの特集を参照。
(中溝丘、オデッド・シャファル)
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