アルバニージー首相、第53回太平洋諸島フォーラム首脳会議に出席
(オーストラリア、ニュージーランド、オセアニア)
シドニー発
2024年09月06日
第53回太平洋諸島フォーラム(PIF、注1)首脳会議が8月26~30日、トンガのヌクアロファで開催された。会議では、気候変動レジリエンス、教育、保健、地域の安全保障など、太平洋島しょ国・地域に影響を与える重要な課題について議論された。オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相は、29日の記者会見でオーストラリアの主要な成果として次の3点を挙げた。
まず、地域の平和や安全保障を強化する取り組みとして、「太平洋警察イニシアチブ(Pacific Policing Initiative:PPI)」の立ち上げに合意した点。地域で起きるサイバー犯罪、薬物犯罪などに対応するため、パプアニューギニアをはじめ地域内に最大4つの警察訓練センターを設置する。また、地域内で横断的に活躍する太平洋島しょ国警察官の配置体制(太平洋島しょ国警察支援グループ:PPSG)を整備するほか、オーストラリアのブリスベンにPPI専用の調整・訓練ハブを設置し、オーストラリア連邦警察(AFP)の施設で訓練を受けることができるようにする。オーストラリアはPPIに対して、5年間で約4億オーストラリア・ドル(約396億円、豪ドル、1豪ドル=約99円)を支出することを発表した。
2点目に、主催国のトンガとは、ニュージーランドと共に、新しい国会議事堂の建設に協力することや、トンガにとって2本目となる国際海底通信ケーブル「トンガ・ハワイキ・ブランチ・システム」(注2)建設プロジェクトの進展を歓迎した。
3点目に、ツバルとは、8月28日に「オーストラリア・ツバル・ファレピリ連合条約」が発効した。この条約は、ツバルが気候変動による海面上昇により、最悪な状況になった場合でも、ツバルの国家主権が継続されることを法的に認める、世界初の条約となる。具体的には、ツバルからの移住に対する特別なビザ発給について2025年の開設を目指し両国が取り組みを進めている。これにより、年間最大280人のツバル国民がオーストラリアへ移住し、就労または就学の機会を得ることができる。条約の発効により、オーストラリアは、ツバルが重大な自然災害、感染症の拡大、または軍事的侵略に直面した際に支援を要請した場合に応じる義務を負う。ツバルは、防衛や安全保障に関して第三国と何らかの新たな協力関係を結ぶ場合はオーストラリアとも相互に合意する責任を負う。
(注1)1971年に発足した枠組みで、大洋州諸国・地域首脳との対話の場および地域協力の核となっている。オーストラリア、ニュージーランド、パプアニューギニア、フィジーなど16カ国・2地域が加盟し,政治、経済、安全保障など幅広い分野における地域協力を行っている(外務省ウェブサイト参照)。
(注2)2022年に発生した海底噴火で、トンガの唯一の国際海底通信ケーブルが損傷、通信が遮断され、大きな被害が発生したことに対応し、オーストラリアはニュージーランドと共同で、2024年6月21日、新たに「トンガ・ハワイキ・ブランチ・システム」の建設に協力すること発表した。オーストラリアは、太平洋島しょ国・地域のための融資制度「オーストラリア・インフラ融資ファシリティ(AIFFP)」(2022年11月28日記事参照)を通じて資金援助を行う。
(青島春枝)
(オーストラリア、ニュージーランド、オセアニア)
ビジネス短信 c8aea9066f2181fc