米制裁対象にイラン航空など追加、仏独英はイランとの航空協定を破棄
(米国、フランス、ドイツ、英国、イラン、ロシア)
ニューヨーク発
2024年09月13日
米国のバイデン政権は9月10日、イランとロシアの企業9社、個人10人、船舶9隻を、ウクライナへの侵攻を続けるロシアに対する、無人航空機(UAV)や近距離弾道ミサイル(CRBM)などの兵器の供与に関与したとして、金融制裁対象の「特別指定国民(SDN)」に指定した。国務省と財務省がそれぞれ発表した。
SDNの対象は、在米資産の凍結や、米国人との資金・物品・サービスの取引禁止が科される。SDNの対象が直接または間接的に50%以上所有する事業体も当該制裁の対象となる。なお、米国人には、米国市民、米国永住者、米国の法律に基づく、もしくは司法権が及ぶ域内に存在する法人(外国支所も含む)、もしくは米国内に存在するあらゆる個人が含まれる。今回SDNに指定された企業・個人などの詳細は、財務省外国資産管理局(OFAC)のウェブサイト(注1)を参照。
今回SDNに指定された企業には、イランの航空会社のイラン航空(Iran Air)が含まれる。イランがUAV開発に使用する、機密性の高い欧米由来のデュアルユース資材の調達ネットワークにおいて重要な要素を構成しているなどとの理由に基づく。なお、イラン航空に関しては、2018年11月に機材67機がSDNに指定されていたほか(2018年11月7日記事参照)、2020年3月に輸出管理規則(EAR)に基づくエンティティー・リスト(EL)に掲載されていた(注2)。
仏独英3カ国もイラン非難の共同声明を発表
フランス、ドイツ、英国政府も9月10日、イラン製ミサイルのロシアへの供与を非難する共同声明を発表した。共同声明では、イラン製ミサイルがロシアのウクライナ侵攻に用いられることで欧州に飛来する結果となり、欧州の安全保障に対する直接的な脅威だとした。また、対抗措置としてイランとの2国間航空協定を直ちに破棄するとしたほか、イラン航空を含めたイラン製兵器のロシア供与に関与した企業や個人に対する制裁措置の発動に取り組むとした。なお、米国CNN(9月10日)によると、航空協定破棄に伴ってイラン航空のEUおよび英国への飛行が制限される。
(注1)OFACが9月10日にSDN指定を発表した、メキシコの麻薬カルテル「CJNG」の活動に関与した疑いのある企業26社、個人9人も併せて掲載されている。
(注2)EL掲載対象に米国製品(物品、ソフトウエア、技術)を輸出などする場合に、商務省産業安全保障局(BIS)の事前の許可が必要となる。
(葛西泰介)
(米国、フランス、ドイツ、英国、イラン、ロシア)
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