中国の対ブラジル投資、7割超がグリーンエネルギー分野に集中

(ブラジル、中国)

サンパウロ発

2024年09月18日

ブラジル・中国ビジネス委員会(CEBC、注)は9月3日、「中国の対ブラジル投資2023年」と題する報告書を発表した。それによると、2023年の中国の対ブラジル投資額は、金額ベースで前年比33%増の約17億3,000万ドルを記録した。前年比78%減を記録した2022年から回復傾向を示した。しかし、プロジェクト数は29件で、前年比9%減少となっている。投資額は2022年を除くと2009年以降で最低だったが、プロジェクト件数は2007年以降では3番目に多い結果だった。投資先地域の68%は南東部で、サンパウロ州が39%を占めている。

分野別では、総投資額の39%を占める電力セクターへの投資が最も多く、6億6,800万ドルに達した。自動車セクターへの投資は33%の5億6,800万ドルで、これらは全て電気自動車(EV)、またはハイブリッド車関連の投資だった。その他のセクターへの投資額は4億9,700万ドルで、残りの28%を占めた。主な投資先は電子機器、インフラ、電気製品、石油・ガスなどだった。

プロジェクト数では、電力が全体の66%(19件)を占め、自動車、石油、情報技術(IT)がそれぞれ7%(2件)だった。プロジェクト数全体の72%がグリーンエネルギー(注2)と関連しており、報告書では、2025年にEVの国内生産開始を目指している比亜迪(BYD)と長城汽車の投資計画(2024年9月2日付地域・分析レポート参照)を紹介した。

報告書によると、この背景には中国の投資戦略の変化がある。中国の対外直接投資は全体としては増加したが、米国、オーストラリア、EUへの投資は減少した。一方、「一帯一路」構想参加国や途上国への投資は増加しており、ブラジルもその恩恵を受けている。報告書では、ブラジルへの投資を後押しする要因として、豊富な再生可能エネルギー資源、鉱物資源、地政学的な安定性などの強みがある点や、中国が進める「新インフラ」(注3)への投資が加速している点などを挙げている。

今後の展望として報告書は、グリーンエネルギー分野で両国の協力拡大が見込まれるとし、中でも再生可能エネルギー発電や、送電網整備、EV関連産業などの分野を挙げている。

(注1)CEBCは、ブラジル・中国間の貿易や投資の促進、ビジネス環境改善を目的に、2004年に設立された非営利団体。北京市とリオデジャネイロ市の双方に事務所を構えている。

(注2)グリーンエネルギーとは、電力(再生可能エネルギー発電など)に加え、自動車産業の電動化を含む。

(注3)中国の新たな発展理念に基づき、技術革新を推進力とする情報ネットワーク、新技術、コンピュータインフラを中心としたインフラ整備を指す。具体的には、再生可能エネルギー〔超高電圧(UHV)送電〕、電気自動車(EV)充電インフラ、情報技術インフラ〔第5世代移動通信システム(5G)、人工知能(AI)、モノのインターネット(IoT)、データセンター〕、都市インフラ(高速鉄道)、高度な製造業(産業インターネット)などが含まれる。

(エルナニ・オダ、中山貴弘)

(ブラジル、中国)

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