台風11号により北部広域で甚大な被害
(ベトナム)
ハノイ発
2024年09月11日
ベトナム北部に9月7日に上陸した台風11号(国際名:ヤギ)が広範囲にわたり甚大な被害をもたらしている。南シナ海で発達した台風では過去30年で最強クラスとされており、当地の日系企業の事業活動にも影響が生じている。
現地メディアの報道によると、10日午後6時時点の死者は127人、行方不明者は54人となった(「タインニエン」紙9月11日)。
特に暴風雨が直撃した沿岸部の被害が深刻だ。港湾都市ハイフォン市では、韓国系LGエレクトロニクスをはじめ、多くの工場が屋根や壁などの損壊や浸水の被害を受けた。加えて、停電や通信障害なども影響し、9日になっても操業できない企業がみられた。ハイフォン経済区管理委員会(HEZA)は10日中に経済区内の9割以上の企業が生産開始できるとの見通しを述べたが、全面復旧には日数がかかりそうだ。ハイフォンの港は7日と8日に操業を見合わせたが、9日から再開している(「VNエクスプレス」9月10日)。
景勝地ハロン湾を有すクアンニン省ハロン市では約5万世帯が被災し、学校やホテルなどの運営にも深刻な支障が出ている。観光客受け入れの再開は未定だ。
ハイフォン市から100キロほど内陸に位置する首都ハノイ市でも、1万本を超える倒木や、建物の損壊や浸水、一部地区での停電などがみられた。台風は勢力を弱め、8日に温帯低気圧に変わったが、内陸部のフート省やイエンバイ省などで、大雨による橋の崩落や洪水などを引き起こしている。
在ベトナム日本大使館の調べ(283社回答、11日正午時点)によると、今回の台風被害があると回答した日系企業は115社で、具体的に事業活動に影響が生じているのは、製造業を中心に少なくとも44社だという。従業員への大きな人的被害は今のところみられていないが、複数の企業が施設の損壊や、浸水による設備や製品の破損を報告している。停電などの影響による操業停止や、それに伴う納期遅れを懸念する企業も複数みられる。ハイフォン市のある企業では、設備や製品の多くに深刻な被害が生じ、操業再開まで60日以上を要するという。
ハノイ市では台風が通過した後も雨天が続き、10日には同市の北東部を流れるホン川の水位が上昇。市内中心部で洪水警報が出され、川を渡る橋では車両が通行制限されるなど、依然予断を許さない状況だ。
(萩原遼太朗)
(ベトナム)
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