韓国政府、持続可能な航空燃料(SAF)拡大戦略を発表
(韓国)
ソウル発
2024年09月06日
韓国の産業通商資源部および国土交通部は8月30日、国際航空の炭素削減と新産業創出に向けた「持続可能な航空燃料(SAF)(注1)拡大戦略」を発表した。当戦略を策定するにあたっては、SAFが国際航空において脱炭素効果が最も大きい手段として認められており、世界19カ国で気候危機対応としてSAF商用運行を実施中で、一部の国では既にSAF混合使用を義務化していることなどを考慮した。また、両部は、韓国は世界トップの航空燃料輸出国として、世界的なSAF需要の拡大に対応し、将来の新成長分野として有望なSAF市場を先取りするための政策的支援が必要とも説明している。
当戦略の主な内容は次のとおり。
- SAF給油の商用運航開始(2024年~):2024年8月30日から国内空港で韓国の航空会社(注2)が国際民間航空機関(ICAO)認証の国産SAFを給油し、国際線定期運航を実施
- SAF混合義務化制度の導入(2027年~):国際航空の炭素規制が強化される(注3)2027年から、国内発着の国際線すべての便にSAF混合(1%前後)給油を義務化
- 国内SAF生産拡大のための投資支援:政府は、国内企業の研究開発(R&D)・設備投資が適時に行われるようにSAFを新成長・源泉技術に指定して支援を続けるとともに、SAFの高い生産コスト負担を軽減するためのインセンティブを設計
- 多様な原料をベースとしたSAF生産技術の高度化:政府は、廃食油以外の、動物性油脂やパーム副産物など、現在の技術で活用できる海外バイオ資源を調査し、SAF生産実証および品質検証も支援
さらに、今回の政府の発表資料には、バイオ燃料全般の供給網の競争力強化やSAF関連の法制度基盤の整備などを推進していくといった点も記載されている。
今回の政府の発表が航空業界に及ぼす影響について、韓国の3大紙の1つ「中央日報」(2024年9月2日)は、「SAF義務化により航空会社が負担すべきコストを補填(ほてん)できる支援政策が必要だ。義務比率だけ決まれば、高くなった燃料費が結局、航空券価格に転嫁されかねない」とする航空業界関係者のコメントを紹介している。
(注1)持続可能な航空燃料(SAF)とは、化石燃料で作らず、既存の航空燃料と化学的に類似しており、航空機の構造変更をせず使用可能な環境にやさしい燃料のこと。動物・植物由来のバイオマスや大気中から回収された炭素などを基に生産され、従来の航空燃料の炭素排出量の平均80%まで削減可能とされる。
(注2)大韓航空、アシアナ航空、ティーウェイ航空、済州航空など6社が参加予定。
(注3)ICAO加盟国では、2027年から、2019年度基準の国際航空炭素排出量の85%水準を超える場合、航空会社は炭素排出権を購入して相殺することが義務化される予定。
(橋爪直輝)
(韓国)
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