第64回メルコスール首脳会合、新たな通商協定締結に向け議論
(アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ、ボリビア)
ブエノスアイレス発
2024年07月09日
メルコスール首脳会議が7月8日、パラグアイの首都アスンシオンで開催された。正式加盟国4カ国からはブラジル、パラグアイ、ウルグアイの首脳が出席したが、アルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領は参加せず、ディアナ・モンディーノ外相が代理出席した。メルコスールへの加盟手続きを進めていたボリビアのルイス・アルセ大統領も出席し、同国が7月4日に国内手続きを終えたメルコスール加盟議定書の批准書をパラグアイのサンティアゴ・ペニャ大統領に手交した。
首脳会合では各国が通商政策を取り上げ、メルコスールの今後の通商協定締結に関するさまざまな考え方を示した。
まず、ペニャ大統領は通商協定の締結を通じた販路開拓の重要性に触れ、特に中東、東南アジア、アラブ首長国連邦(UAE)、シンガポール、日本といった国・地域はメルコスール原産品の新たな市場として重要だとした。メルコスールの加盟国が一体的に通商交渉を行う現在の交渉体制については、引き続き一体的な交渉が望ましいとの認識を示した。
ブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領は、EUとメルコスールの自由貿易協定(FTA)はEUが内部矛盾を解消できないことで停滞しているが、メルコスールがシンガポールと2023年12月にFTAに署名するとともに、UAEとの包括的経済連携協定(CEPA)の交渉を開始したことに触れ、メルコスールの自由貿易が着実に進展しているとの認識を示した。また、中国との対話や域内共通通貨の創設は2024年下半期に推進すべき重要なテーマだとした。
2024年下半期のメルコスール議長国となるウルグアイのルイス・ラカジェ・ポウ大統領は、フランスのエマニュエル・マクロン大統領がメルコスールとのFTAの内容をゼロから再交渉する可能性に触れたことについて、25年間も交渉をした後にそのような提案をすることはあり得ないことだと批判。また、自国が議長国の間にメルコスールと中国の対話メカニズムの再開を提案するとし、自国が進めようとしていた中国との2国間協定の締結は決してわがままなことではなく、メルコスール諸国が一緒に前進できないのであれば、異なるスピードで各国が交渉すべきという従来の姿勢を示した。
アルゼンチンのモンディーノ外相は、メルコスールは世界市場へアクセスするためのツールであるべきで、日本、インドネシア、マレーシアといったアジア諸国がメルコスールとの通商協定の締結に関心を示す今、メルコスールがオープンなことを示す必要があると述べた。通商交渉の体制については、より新しくより適切で、よりスピード感を持って交渉できるような体制に変える必要があるとの認識を示した。
(西澤裕介)
(アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ、ボリビア)
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