極右新会派が発足、欧州議会の第3勢力に
(EU、スウェーデン、デンマーク、オランダ、フィンランド、イタリア、フランス)
ブリュッセル発
2024年07月10日
7月8日に、欧州議会の新たな政党グループ(注1)「欧州の愛国者(Patriots for Europe)」の立ち上げが発表された。欧州議会(定員720)によると、欧州の愛国者には12加盟国の13政党が参加。84議員が所属(添付資料表参照)することから、中道の欧州刷新(Renew)グループ(76議席)や一部極右を含む右派の欧州保守改革(ECR)グループ(78議席)を抜き、第3勢力となった(注2)。
欧州の愛国者は、現在議長国を務めるハンガリー(2024年7月5日記事参照)のオルバーン・ビクトル首相〔ハンガリー市民同盟(フィデス)党首〕が主導する新会派だ。オルバーン首相は6月30日、チェコのアンドレイ・バビシュ前首相(ANO 2011党首)とオーストリアのヘルベルト・キックル元内相〔自由党(FPO)党首〕とともに、立ち上げの意向を表明していた。その後、極右のアイデンティティと民主主義(ID)グループに所属していたオランダの自由党(PVV、2024年6月17日記事参照)、ベルギーのフランダースの利益、ポルトガルのシェーガ(CHEGA)などが合流を発表。7月7日のフランス国民議会選挙後(2024年7月9日記事参照)にIDの最大勢力であるフランスの国民連合(RN)も参加を正式に表明したことから、欧州の愛国者がIDを事実上吸収した格好だ。
極右新会派誕生も、議会運営への影響は限定的か
欧州の愛国者は、会派の方針や政策について発表していないものの、フィデス、ANO、自由党(FPO)の3党が6月30日に署名した宣言によると、加盟国の主権を強調し、EUの統合深化に反対するEU懐疑派であり、キリスト教など欧州のアイデンティティや伝統の保護、不法移民対策の強化など保守色が強い主張を掲げている。また、オルバーン首相は署名の際、欧州グリーン・ディールに批判的な発言もしている。
現地報道によると、欧州の愛国者は第3勢力となったものの、極右とみなされることから、過半数を確保した親EU中道3会派(2024年6月11日記事参照)が他の親EU会派と結束し、欧州の愛国者を欧州議会の要職から排除するとみられる。
(注1)欧州議会では、議員は加盟国別でなく、加盟国の各政党の政治理念に基づき構成される政党グループ(会派)別に行動する。
(注2)最新の欧州議会選挙の結果は、欧州議会の特設サイトを参照。
(吉沼啓介)
(EU、スウェーデン、デンマーク、オランダ、フィンランド、イタリア、フランス)
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