欧州委、中国製BEVへの暫定的な相殺関税措置を発動

(EU、中国)

ブリュッセル発

2024年07月08日

欧州委員会は7月4日、中国製バッテリー式電気自動車(BEV)に対する暫定的な相殺関税措置を発動すると発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。2023年10月に開始した反補助金調査(2023年10月6日記事参照)の結果、中国のBEVバリューチェーンが不公正な補助金を享受し、EUメーカーに経済的損失を与える恐れがあると判断した。欧州委は2024年11月2日までに最終措置について結論を出す。

暫定措置に関する実施規則外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが7月4日付EU官報に掲載され、翌5日から最長4カ月間暫定措置を実施する。追加関税率は、比亜迪(BYD)など3社に対し17.4~37.6%、その他の企業は調査への協力の有無に応じて設定した(添付資料表参照)。BYD以外の関税率は6月12日の事前開示(2024年6月14日記事参照)からやや下方修正された。

実施規則によると、中国製BEVの輸入は2021年に急増。EUのBEV市場での中国製車の割合は2020年に3.5%だったのに対し、2022年10月~2023年9月は22.8%と急伸した。また、中国の2024年のBEV販売台数は約610万台と予測されるのに対し、生産台数は900万台を超え、過剰生産に陥っていると暫定的に判断し、中国内や第三国市場の需要が伸び悩む中、EUへの輸出は今後さらに増え続けると結論付けた。EUメーカーは電動化に多額の投資を必要としており、BEV事業の採算が取れるのは2025年ごろとみられる。安価な中国製車の輸入増加は今後のEUのBEV生産と販売強化にも損害を与えるとした。

欧州委は最終措置の判断に向けて、今後も中国政府と実務レベルでの協議を継続し、EUの懸念に適切に対処するWTOルールに即した解決策を模索するとした。

なお、最終措置の発動には加盟国の採決が行われる。措置を否決するには、EUが定める特定多数決基準(EU27カ国のうち15カ国以上が発動に反対し、それらの国の人口が合計でEU全体の65%以上)を満たす必要がある。現地報道によると、フランス、イタリア、スペインは追加関税賦課に前向きだったが、ドイツ、ハンガリー、スウェーデンは反対していた。ドイツが反対票の形成に動く可能性があるが、実現は厳しいとみられる。

(滝澤祥子)

(EU、中国)

ビジネス短信 2d75dbf149b656c0