オーストリアの大手企業8社、グリーン水素輸入で協力
(オーストリア)
ウィーン発
2024年07月30日
オーストリア水素輸入連盟(HIAA)は7月2日、2030年までのグリーン水素(注1)のパイプラインによる大量輸入の実現に関するポジションペーパーを発表した。HIAAは、オーストリアのエネルギー集約型企業など8社(注2)が2022年に結成した団体で、製造業の脱炭素化における水素の活用を推進してきた。
同ペーパーによると、ガス市場管理公社オーストリア・ガス・グリッド・マネジメント(AGGM)の調べに基づき、2030年と2040年の国内のグリーン水素の年間使用量をそれぞれ36万トン〔12テラワット時(TWh)〕、140万トン(47TWh)と予測している。一方、グリーン水素の国内生産量は2030年に0.9TWh、2040年に25TWhと予測し、需要を賄うためには、パイプラインを通じた水素の輸入が欠かせない。
2030年から必要な量の水素を輸入するためには、大規模な投資が必要となる。HIAAのメンバー企業だけで、2030年までに約72億ユーロ、2040年までに約189億ユーロの投資を予定している。その大部分は企業自身が負担するが、水素市場の立ち上げ当初は経済的採算性が確保できないため、政府による支援措置と保証も不可欠だと提言した。
また、企業の投資判断には、法的環境と支援措置の整備が基礎条件で、国内の法的な枠組みの確定は緊急課題だ。HIAAは、2025年内にEUの再生可能エネルギー指令(RED III)と水素・脱炭素ガス市場パッケージの国内の実施を要請し、同時に水素の輸送インフラのために投資決定も行うべきだとした。
電力大手フェアブントのミハエル・シュトルーグル取締役会長は同日の会見で、「企業は他のエネルギー資源と比べても安価なグリーン水素の入手が保証されなければ製造設備の改修に取り組まない。一方、水素事業者は信頼性のある顧客がいなければ、水素の大量生産に必要な大規模投資を実施しないという問題がある」と述べ、オーストリアの水素バリューチェーンの実現のためには政府の対応が必要だと強調した(「デア・スタンダード」紙7月3日)。
オーストリア政府は、2024年にグリーン水素生産に係るプロジェクトのために4億ユーロを提供している。
(注1)再エネ由来の電力を利用して、水を電気分解して生成される水素。製造過程で二酸化炭素(CO2)を排出しない。
(注2)アルミ大手のAMAG、鉄鋼大手フェーストアルピーネ、耐火材のRHIマグネシタ、化学のLAT窒素、エネルギー大手のフェアブント、ガスパイプライン運営会社のガス・コネクト・オーストリア、公共事業のウィーナーシュタットベルケ、石油・ガス・電力大手のOMVの8社。
(エッカート・デアシュミット)
(オーストリア)
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