イタリアの欧州議会選で与党連立が圧勝、G7での存在感に期待

(イタリア、EU)

ミラノ発

2024年06月17日

イタリアで6月8~9日に欧州議会選挙が実施された。欧州議会選挙のイタリアの76議席で、国政で中道右派の連立政権を担う3党の得票率と獲得議席数は、イタリアの同胞(FDI)〔欧州議会所属政党グループ:欧州保守改革(ECR)〕が28.8%で24議席、フォルツァ・イタリア(FI)〔欧州人民党(EPP)〕が9.6%で8議席、同盟(Lega)〔アイデンティティーと民主主義(ID)〕が9.0%で8議席だった。3党を合わせると47.4%の得票率となり、現在のメローニ政権にさらなる追い風が吹いた。

一方で、中道左派の民主党(PD)〔社会・民主主義進歩連盟(S&D)〕が24.1%で21議席と奮闘した。第三極の五つ星運動(M5S)〔無所属〕は10.0%で8議席だった。5つの選挙区のうち、南部を除く4区でFDIが第1党、南部ではPDが第1党となった。

FDIを率いるジョルジャ・メローニ首相は開票後に「(連立政権が)このまま進んでよいという国民からのメッセージを受け取った」と述べ、「イタリアは、G7と欧州の中で最も強力な政権であることを誇りに思う。過去にはなかったことであり、満足しているとともに、重大な責任も感じている」とコメントした。

副首相兼インフラ・交通相のマッテオ・サルビーニLega党首も「メローニ首相と(FIの)アントニオ・タヤーニ外務・国際協力相に祝意を述べる。われわれが成長しているということは(現政権が)よい働きをしているということだ」とコメントした(6月10日「コリエーレ・デラ・セーラ」紙)。

一方で、FDIに迫る勢いをみせたPD党首(書記長)のエリー・シュライン氏は「われわれはFDI、メローニ首相との距離を詰めつつある。(2年前の)国政選挙と比較すると、200万票あった得票数の差が100万票に縮まっている」とコメントした。

投票率は、欧州議会選で過去最低の48.3%。メローニ首相をはじめ現職の閣僚など著名な政治家が多数出たにもかかわらず、有権者の行動を喚起するに至らなかった。主要経済紙の「イルソーレ24オーレ」(6月10日)は「国政選挙ですら、選挙で何も変わらないという意識がまん延している中で、欧州議会選はさらに問題がどこにあるのかわかりにくい。投票する理由が必要だ」と分析。各政党が国政選挙に匹敵する選挙として盛り上げている現状との温度差を指摘した。また、メローニ首相もラジオ出演で投票率低下についての問いを受けて「イタリアだけでなく他国でも投票率が低下しており、EUが遠い存在になってしまっている。EUの役割について反省するときだ」とコメントした。

FDIは極右政党と報じられることも多かったが、2022年10月の政権交代以降の政策や外交はEU協調路線を貫いてきたと評されている。

(平川容子)

(イタリア、EU)

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