ルーマニアの欧州議会選挙、統一地方選挙とともに連立与党が圧勝
(ルーマニア、EU)
ブカレスト発
2024年06月18日
ルーマニアの欧州議会選挙は6月9日に実施され、EU加盟国中、6番目に多い33議席が争われた。中央選挙管理委員会によると、6月16日の開票率99.99%の時点で与党連立政権の左派・社会民主党(PSD)/右派・リベラル政党の国民自由党(PNL)が19議席(得票率:48.6%)を獲得して圧勝した。投票率は過去5回の欧州議会選で最高となる52.4%を記録した。
次いで、ルーマニア統一同盟(AUR)は6議席(14.9%)、国民運動党(PMP)/ルーマニア救出同盟(USR)の野党連合統一右派同盟(ADU)は3議席(8.7%)、ハンガリー人民主同盟(UDMR)は2議席(6.5%)、SOSルーマニア党(SOS)も2議席(5.0%)を獲得した(注)。
今回の選挙で最も注目されたのが、2019年に設立された新興政党で極右のAURの動向だ。同党は2019年の設立以来、徐々に支持を拡大させ、2020年12月の上下両院選挙では9%強の支持を得た。選挙前の世論調査では、同党への支持率は20%に届く勢いをみせ、連立与党は警戒心を強めていた。欧州議会では、PSDは社会・民主主義進歩連盟(S&D)グループ、PNLは欧州人民党(EPP)グループに所属するが、イデオロギーの異なる2党が右派勢力に対抗するために協力体制を組み、この戦略が奏功した。
同日に行われた統一地方選挙では、PSDが全国的に議席を伸ばした。PSDは県議会議員選挙で34.7%、地方議会選挙で33.0%、市町村長選挙で34.9%といずれも3割以上を獲得した。PNLは同28.5%、26.4%、29.7%の支持を獲得し、PSDとは5.2~6.6ポイントの得票差にとどまった。続くAURは同11.0%、9.6%、6.4%と伸び悩み、連立与党が圧倒的な強さを見せた。投票率は50.0%で、前回2020年の46.6%を上回った。ブカレスト市長選挙では、ADUの支持を受けて無所属で立候補した現職のニクショル・ダン氏が得票率46.9%(6月10日時点速報値)を獲得し、PSD候補で元市長のガブリエラ・フィレア氏(22.3%、同)を破り再選された。
ルーマニアでは、2024年にEU議会選挙と統一地方選挙のほか、大統領選挙が9月、上下両院選挙が12月に開催される予定だ。
(注)複数政党が同盟を組む場合、必ずしも欧州議会では同一グループに属さない。AURは欧州議会のグループでは欧州保守改革(ECR)グループで1議席、ADUは欧州刷新(Renew)グループで2議席かつ欧州人民党(EPP)グループで1議席、UDMRはEPPグループで2議席。AURの残り5議席とSOSの2議席は現状ではグループに属さない新規無所属の扱い。
(高崎早和香)
(ルーマニア、EU)
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