中銀、政策金利を7回連続引き下げ10.50%に、利下げ幅は縮小
(ブラジル)
サンパウロ発
2024年05月20日
ブラジル中央銀行の金融政策委員会(Copom)が5月8日に開催され、政策金利(Selic)を10.75%から0.25ポイント引き下げ、10.50%にすることを決定した。2022年2月以来の最低水準で、金利を下げ始めた2023年8月の会合から7回連続の利下げとなる(2023年8月8日記事参照)。金利の下げ幅は前回会合の引き下げ幅(0.5ポイント)の半分となった。
14日に公開された議事録によると、委員会メンバー9人のうち5人がインフレへの懸念とインフレ目標値達成のために下げ幅を0.25ポイントに抑えることに賛成し、残り4人は前回会合と同程度の引き下げ幅を継続することに賛成として意見が分かれた。なお、6月以降の会合での同規模の利下げ予定については言及されなかった。
Copomは、外部環境は米国の金融緩和サイクルの開始と、多くの国でインフレの低下速度についての不確実性が高まることで、引き続き不安定になっていると指摘した。主要国の中銀は、労働市場の圧力が顕著な状況で、インフレを目標値に収束させることに引き続き取り組んでいる。一方、国内の経済活動と労働市場の指標はCOPOMの予想よりも強さを示している。
5月10日付の中銀週次レポート「フォーカス」(注)によると、代表的な物価指数の拡大消費者物価指数(IPCA)の見通しは、2024年が3.76%、2025年が3.66%となっており、4週間前の見通しから0.05ポイント微増している。いずれも国家金融評議会(CMN)が設定する2024年と2025年のインフレ目標値3.00%(上限許容幅±1.5%)以内だ。
ブラジル全国工業連盟(CNI)のリカルド・アルバン会長はCopomの決定を批判した。同会長は「(金利引き下げペースの縮小という)今回の決定は、インフレが抑制されている現状とは相いれない。このままの高金利水準でブラジルの新産業化計画を継続していくことは非現実的だ」と述べている(5月8日付CNI公式サイト)。
(注)フォーカスは、中銀がブラジル国内100機関以上の金融機関を対象に行った予測をアンケートでまとめたもの。毎週金曜日の集計を基に平均値を算出し、翌週の月曜日に公表される。
(中山貴弘)
(ブラジル)
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