第1四半期の電気自動車の新車登録が減少、マグナ・シュタイヤーが500人解雇
(オーストリア)
ウィーン発
2024年05月21日
オーストリアでは、電気自動車(EV)への転換の勢いがやや鈍ってきている。ここ数年、EVの新車登録台数は毎年増加し、2023年には前年比39.4%増の4万7,261台だった(2024年2月8日記事参照)が、2024年4月10日のオーストリア統計局の発表によると、2024年第1四半期は前年同期比3.9%減の1万802台だった。
経済誌「インダストリー・マガツィン」の2024年5月号では、「電動憂鬱(ゆううつ)」という表題でEV転換による自動車産業への影響を取り上げた。部品メーカーは、研究開発、機械の入れ替え、販売などに莫大(ばくだい)な事前投資が必要な上に、最近では、コスト圧力の高まりや不安定なビジネス環境に直面しているという。例えば、数カ月の準備作業が完了した後に発注者によって注文量が削減される事例もある。一方で、調達体制が従来の内燃機関車ほど確立していないので、新しいビジネスチャンスがあると指摘する企業もいる。
マグナ・シュタイヤー、電動SUVのフィスカー「オーシャン」を生産停止
オーストリア放送協会(ORF)などは4月24日、オーストリアの唯一の完成車メーカーであるマグナ・シュタイヤーが、従業員1万770人のうち500人を解雇する、と報じた。2023年12月にはすでに450人を解雇していた。同社は「受注状況の悪化」を理由として挙げるが、業界関係者によると、同社が受託生産する米国フィスカーの電動SUV(スポーツ用多目的車)「オーシャン」の生産一時停止が主な原因とみられる。
マグナ・シュタイヤーが2022年第4四半期から生産する「オーシャン」は、同社のEV生産への転換のための大きな一歩と思われた。各種報道によると、2023年には5万台、2024年には15万台を生産する計画だったが、フィスカーの経営危機などを受けて、2023年には1万台弱しか製造されず、2024年3月には生産を一時停止した。これにより、マグナ・シュタイヤーの2024年第1四半期の売上高は前年同期比で15%減となった。
現在、マグナ・シュタイヤーは、ジャガーのEV「Eペイス」のほか、北京汽車集団のEVブランド「アークフォックス」の「アルファT」と「アルファS」モデルを生産している。また、高級オフロード車のメルセデスベンツ・ベンツ「Gクラス」のEVモデルの生産も開始している(「クライネ・ツァイトゥング」紙2024年2月6日)。
(エッカート・デアシュミット)
(オーストリア)
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